クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

MAZDA3 一番上のエンジンと一番下のエンジン池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2019年12月09日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

人を「バカ」にするクルマ

 思うのだが、次のクルマに乗って「お前の達観は本物か?」といきなり刃を向けられた。いうまでもなく1.5のガソリンユニットだ。111馬力/6000回転、14.9kgfm/3500回転というスペックは、今の時代正直しょぼい。ところが軽い。ややこしいのだが、軽いというのは実はあまり物理的な話ではなかったりする。ユニット別の最軽量グレードを選んで車両重量を比べてみると、1340キロ(1.5G)、1360キロ(2.0G)、1410キロ(1.8D)、1400キロ(X)という具合で、実はそれほどの差があるわけではない。にも関わらず1.5のドライブ感が圧倒的に軽い。

 Xが、太いグルーブ感のあるソウルミュージックだとすれば、1.5Gはカーペンターズのように軽やかで明るく楽しい。しかもすっきりしていて、何ともいえない開放感を備えている。しかつめらしく、あれこれチェックするのを忘れて、すっかりドライブを楽しんでしまった。口にこそ出さなかったが心中では「うひょーい」状態。このクルマは人を「バカ」にする。

2年前にドイツで試乗したMAZDA3のプロトタイプ。外観こそ先代のアクセラだが、中身はすでにMAZDA3だった。ただし、当然のことながら各部の完成度は向上している

 いやいやそんなことばかり言っていないで、インプレッションもしなくてはならない。まずエンジンだ。低速トルクはXと比べれば凡庸なのだが、不足は感じない。そこから回転を上げていく過程でのサウンドがいかにも「らしい」感じで気持ちを盛り上げてくれる。もちろん現代の水準でいえば速くはない。けれども運転を楽しむのに必要な加速力は十分に備えている。

 上り勾配ではトルクを補うためにATがギヤを落とすので、回転は結構盛大に上がるし、それをノイジーだと思う人にはノイジーだろうが、ドライバーにとっては気持ち良い。ちなみにXは、そもそもトルクが太く、あまり極端なシフトダウンを行わずに走れる上、エンジンがカプセル構造になっていて遮音のレベルが違うので、はるかに静かである。

 話を戻そう。速度を乗せたところから減速にかけては市販車随一のブレーキフィールを味わえる。スムーズな切り込み感と信頼感を併せ持つステアリングを穏やかに切り込むと、軽い鼻が精密にするりと動いて、軽快なフットワークでコーナーをこなしていく。

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