しょうゆを育てるサブスク「BOTTLE BREW」でキッコーマンがブランドの証「六角形」を使わなかったワケ乱立するサブスクビジネス 成否のカギを探る(4/4 ページ)

» 2019年12月23日 08時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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 ボトルブリューでは消費者に対する新たな提案だけでなく、さまざまな分野と協業する「コ・クリエーション」という考え方も重視している。チョコレートブランドと協力し、ボトルブリューで育てたしょうゆを使用して作ったチョコレートも、過去の体験会で提供した。会員の中には飲食店経営者もいるという。今後は卓上サイズだけでなく、店舗で使えるような大容量のサービスも検討している。

さまざまな分野との協力「コ・クリエーション」を進める(出所:キッコーマン公式Webサイト)

あの“六角形マーク”を使わなかったわけ

 ボトルブリューで使うボトルには、キッコーマンを代表する「六角形マーク」をあしらっていない。これはなぜなのか。

 花田氏は、「六角形のロゴは良くも悪くもインパクトが強い。従来の『家庭のしょうゆ』感を引き寄せてしまう」と話す。しょうゆの新しい消費方法を提案するサービスだからこそ、あえて代名詞ともいえるマークを取り払った。「マークをつけているものは、キッコーマンとして商品品質を保証していることも示す。ボトルブリューは利用者が作り上げるしょうゆなので、あえて“キッコーマン印”を付けなかった、という理由もある」と話した。

 ボトルのキャップも、キッコーマンらしい赤色ではない色を活用した。当初は女性をターゲットとしていたこともあり、ピンクから始まり緑、青といったものを検討したという。ただ、最終的にはおしゃれな空間に置いても違和感が少ない色に落ち着いた。ちなみに、キッコーマンブランドであることを隠しているわけではなく、ボトルの台座は六角形だ。

ボトルには六角形をあしらっていない

 「キッコーマンのロゴを付けないという選択には葛藤もあった。ただ、会社としてチャレンジの機運が高まっていることで、あえて野心的な選択を取った」と花田氏は話す。同社は調理実演やトークを楽しめる「KIKKOMAN LIVE KITCHEN TOKYO」や発酵をテーマにしたチャンネル「こころダイニング」、オリジナルワインを作れるサービス「WINE BLEND PALETTE」など、顧客とのつながりを強める新たな取り組みを積極的に展開している。「コンセプトを持って商品開発をしている自負はあるが、スーパーで購入してもらうだけではファンを作ることができない。今後はこうしたサービスで、ファンの囲い込みを進めていきたい」と花田氏は展望を話した。

 β版ながらも注目を集めるボトルブリューは、縮小傾向にあるしょうゆ市場と、キッコーマンのファンづくりをどのように変えていくのか。今後の展開に注視したい。

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