日本郵政の元凶は「多すぎる郵便局」と考える、これだけの理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2019年12月24日 08時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

数が増えたように見せる「粉飾テク」

 ご存じのように、郵政民営化の基本的な考え方は、ユニバーサルサービスということで過疎地などにもあって、あまりもうけを生まない郵便事業を維持するために、金融・保険で稼いで金を突っ込むという構造である。

 しかし当然、金融・保険も人口減少の影響を受ける。若者が少ないので新規契約者はなかなかつかまらない。だから、かんぽ生命のノルマかけられた人々は「二重契約」などのインチキに走った。1人の高齢者に契約を解除させて、無保険期間をつくって再び契約をさせれば、「新規」になる。人口減少社会の中で、数が増えたように外形的に見せる「粉飾テク」と言っていいだろう。

 このような問題を解決する方法は究極的には2つしかない。日本の人口を増やすか、郵便局の数を減らすかである。残念ながら日本の人口減少はもう食い止めることができないので、後者しかない。ユニバーサルサービスをうたう以上、現在の郵便局を死守しなくてはいけないという原理原則は分かるが、それを死守するために高齢者への組織的詐欺行為、若者への陰湿なイジメなどが加速度的に増えていくことを踏まえると、果たしてどちらが社会へのダメージが深いかを考えなくてはいけない。

 これこそが、郵便局は減らすしか道がないと筆者が考える理由だ。

 総務省の郵便局活性化委員会の「諸外国の郵便サービス」(平成30年12月7日)によれば、日本の面積約37.8万平方キロメートルと近いドイツ(約35.7万平方キロメートル)の郵便局は1万3000局である。ドイツは日本よりも4000万人ほど人口が少ないことを差し引いても、2万4000局は明らかに多い。

 日本郵便によれば、1日の窓口来客数が20人以下の郵便局は3448局。人口減少で利用者は減少していくなか、これまでのような「高齢者詐欺」も禁止されるので、金融・保険のカネで維持することも難しい。つまり、遅かれ早かれ運営が行き詰まるのだ。

 ならば、「郵便局」という「器」にいつまでもこだわるのではなく、IT、コンビニ、宅急便など他の民間サービスを活用して、過疎地の郵便局がこれまで担っていた役割を次につないでいくほうが長期的な視点で見れば、はるかに希望があるのではないか。

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