日本郵政の元凶は「多すぎる郵便局」と考える、これだけの理由スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2019年12月24日 08時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

郵便局を減らさないで済む方法

 なんてことをいろいろと言ってみたが、実は郵便局を減らさないで済む方法が一つだけある。が、これは日本人には到底受け入れられない話なので、ハナからあきらめているのだ。参考にそれを言うと、「価格をあげる」のだ。

 前出「諸外国の郵便サービス」の中では諸外国の郵便料金が比較されている。各国の封書料金が12年から上がっている中で、日本だけはビタっと据え置きで、しかも最安値なのだ。

 『各国では郵便料金の引き上げが複数回行われているが、日本では2014年の消費税増税に伴う値上げを除けば、1994年以降封書の最低料金は据え置かれている』

 本来ならば、サービス網を維持するのなら、他の国では当たり前のように行なっている郵便料金の引き上げをすべきだが、「低価格・高サービス」が義務教育のように骨の髄まで叩き込まれている我々日本人には、これが許せない。

 日本人の賃金は、先進国の中でも際立って低くて、最近は外国人労働者からもバカにされている、なんて嫌味を言われても「賃金を上げたら日本経済はもうおしまいだ!」なんて天を仰ぐ人たちが社会の大多数を占めていることからも分かるように、我々はもはやサービスの価値を自分たちで上げていくことができないのだ。

 価格が低いので、賃金も低い。加えて人口が急速に減っているのに、人口増加時代を生きてきた高齢者が満足するようなサービス網を維持しなくてはいけないので、若い労働者たちは上から「もっと安く、もっと高いサービスを」という支離滅裂なことを命じられる。それができないと殴られたり、「虫けら」と罵声を浴びせられたりする。だから、そういうブラックな現場では働きたくないと敬遠して、人手不足が深刻していく。

 このあたりの負のスパイラルは、低賃金でバイトのなり手がいないのに、「24時間営業」や「ドミナント戦略」に執着するコンビニ業界を見れば分かりやすいだろう。

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