だが、このような、遺族に対して謝罪すらせず、逆に遺族の行動を監視するような対応は、残念ながら過労死事件では珍しくない。それは、企業にとって過労死被害への損害賠償は、回避すべき経済的な「コスト」だからだ。
社員が亡くなった場合に全ての企業が真っ先に考えるのは、その後労災申請や民事訴訟を遺族から提起される懸念である。労災が認定されれば企業が負担する労災保険料が増え、さらに裁判になれば数千万円から場合によっては1億円を超える賠償支払いを求められる可能性がある。
当然だが命をお金に代えることはできず、何億円支払われても「足りる」ことはない。むしろ、遺族はお金よりも会社が過労死の責任を認めることを求めて裁判を提起しているのだが、反省のない会社から見れば、これは単なる経済的な「コスト」なのだ。三菱電機側の事例でも、自らの問題を絶対に認めようとしない背景には、こうしたコストを回避したいという論理も強く影響しているのではないだろうか。
では、このようなコストを回避するために企業側はどう対応するのか。誠実に謝罪して賠償する企業も当然あるが、多くの会社は労働時間やパワハラの証拠を処分したり、うその説明を遺族にすることで労災申請を諦めさせるという形で「コスト削減」を行っている。
実際には長時間労働やパワハラなどが原因で亡くなったのだとしても、それらの事実をもみ消してしまえば、あるいは遺族に請求を諦めさせれば、「過労死」をなかったことにできるからだ。
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