同社の「隠蔽体質」は、事件への対応に顕著にあらわれている。20代男性の遺族や、精神疾患を患った別の労働者が強調するのは、事件が発生した後の三菱電機の「不誠実」な対応だ。20代男性の遺族は、「三菱電機の私たちへの対応は、誠意があるとは言い難く、徹底した情報統制・管理がされている感じを受けました」とのコメントを発表している。遺族の代理人を務める神奈川総合法律事務所の嶋崎量弁護士(※崎はたつさき)が記者会見で報告したところによれば、会社からはいまだに謝罪も納得できるような説明も受けていないという。
また、遺族が社員寮に荷物を引き取りに行ったときなどに家族を「監視」するような対応を会社担当者がとり、そして「死ね」と発言した上司が送検されたという報道が出た後に会社が執拗(しつよう)に電話を遺族にかけたこと、などの会社の対応に遺族は疑問と怒りを抱いているという。
これでは、遺族が「三菱電機に反省の色は見られず、保身に全力を注いでいるように感じます」とコメントするのは当然だといえよう。
同社で精神疾患を発症した30代男性も、今後の予防のために労災の事実を社内で周知するよう会社に促したものの、受け入れられなかったという。彼は「部下をつぶそうが、国から労働災害認定されようが、そして死人が出ようが問題なしというのが三菱電機の文化になってしまっています」と話している。
隠蔽に固執し、対策強化やその前提となる社内への周知を拒む姿勢は、過労死を繰り返す体質に深くかかわっていることが推察できる。実際に、14年〜17年における5件の労災認定をリークした朝日新聞によると、三菱電機は取材に対して、労災認定があったことを社内に周知しておらず、それぞれ「個別の事情がある」(人事部)として、労務管理に構造的な問題はないと回答したという。
隠すから対策が進まずに事件を繰り返すのだが、会社側はそもそも対策する必要を感じていないから隠すし、遺族に対しても誠実な対応をしない。そして、また新しい事件が引き起こされる……。こうした循環が存在しているようなのだ。
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