プロ野球に進出したソフトバンク、楽天、そしてDeNAという3つのIT企業が、これだけ異なる歩みを見せていることは興味深い事実です。かつて15〜20年ほど前、楽天はネットのショッピングモール事業でDeNAのビッダーズと競合し、ソフトバンクはPCソフトの流通業からYahoo! BBのブロードバンド事業などに従事していた会社でした。もともとは似たような位置でスタートを切った3社が、過去から振り返ると、こんなに面白い変遷をたどっているのです。
楽天は本業の一部に掛け算をして本業に資する何かをつくるタイプ。ソフトバンクはブランディング型。DeNAはスポーツビジネスそのもので成功している会社というイメージになっているといえます。ひとくくりに「スポーツビジネス」といっても、これだけいろいろな捉え方があり、手法があるということです。
ベイスターズの球団社長時代、横浜において強い影響力を持つ、とある重鎮の1人に言われた言葉は、まさに現状を“予言”していたなと最近、よく思い出します。横浜市内のベイスターズ通り(関内仲通り)にあるすし店で食事をしていたとき「いずれベイスターズの経営が本体を救うことになるんじゃないか」と言われ、当事者の私自身が、ハッとさせられたのを強く記憶しています。地域に密着した取り組みを進め、観客動員などがガンガン伸びていく中で、背中を押してくれるようになり、横浜スタジアムのTOBも応援してくれました。
DeNAは「プロ野球チームを持ったIT企業」から、スポーツ事業への特化に進もうとしています。それはベイスターズの輝かしい成功を更に発展させなくてはならないからですが、そんな特殊な企業が今後、どのような道を切り開いてくれるのか、どのようなモデルケースになってくれるのか。既に球団社長を辞めた身ですが、頑張ってほしいなと思って見ています。これからメルカリ、ミクシィなどに続いて、新たにスポーツビジネスに進出を始めるIT企業がどんどんと増えていくはずです。これは時代の必然であり、東京五輪の後にはさらにその動きが加速していくでしょう。
池田 純(いけだ じゅん)
早稲田大卒業後、博報堂等を経て2007年にディー・エヌ・エーに参画。
2011年に35歳という史上最年少の若さで横浜DeNAベイスターズの初代球団社長に就任。
2016年まで社長を務め、さまざまな改革を主導し球団は5年間で単体での売上を倍増し黒字化を実現した。
退任後はスポーツ庁参与、明治大学学長特任補佐、Jリーグや日本ラグビー協会の特任理事等を歴任。
現在はさいたま市と連携しスポーツで地域創生、地域活性化を図る(一社)さいたまスポーツコミッションの会長も務める一方、
大戸屋やノジマ等企業の社外取締役からITやゲーム業界、スタートアップ等の顧問も務める。
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