だが、一番の変化は車両の上ではなく、その“下”にこそあるのだという。N700Sの設計責任者である、JR東海・新幹線鉄道事業本部車両部車両課の福島隆文課長はこう説明する。
「お客さまに対しては快適性という点でもさらなる追求をしましたが、前のN700Aとの大きな違いは安全性です。N700Aよりさらに短いブレーキ距離で停車できるようになったほか、特に大きいのがバッテリー自走システムを取り入れた点です。特にこの点で車両の下が別物になっていると言えます」
バッテリー自走システムとは、車両下にあるバッテリーに予備電力を蓄えておくことで、停電時に架線からの給電がなくても自力で走行できるシステムのことだ。福島課長はこう続ける。
「バッテリー自走システムにより、停電でお客さまが車内にとどまっていたような場面でも、最寄りの駅や安全な場所まで移動していただけるチャンスは大きくなると思います」
N700Sの登場により、乗客が長時間車内に缶詰めにされるという光景は過去のものになるかもしれない。
そしてこのバッテリー自走システムは、乗客を避難させるためだけではない。例えば19年10月に発生した台風19号では、その記録的な大雨により長野県の長野新幹線車両センター(JR東日本)が冠水し、新幹線車両10編成が廃車せざるを得なくなったことは記憶に新しい。
バッテリー自走システムはこうした大規模災害時で停電している局面でも、車両自身も自走して安全な場所に避難させられることが視野に入れられるのだ。JR東海は11月13日にも、こうした大規模災害時などを見据え、N700Sのバッテリー自走訓練を実施している。
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