#SHIFT

若かりし“橋下徹弁護士”が「報酬の30%」を事務所に入れていた理由――全ての仕事は「表裏一体性」で考えよ橋下徹“異端”の仕事術【1】(2/4 ページ)

» 2020年02月05日 05時00分 公開
[橋下徹ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

報酬の30%を事務所に入れる契約を結んだ

 でも僕には、1つだけみんなと違った点がありました。当時は、イソ弁が個人で受けた仕事の報酬は全てイソ弁自身の懐に入れることが一般的だった中で、僕は、報酬の30%を事務所に入れるという契約を事務所と自主的に結んだのです

 同期のイソ弁たちからは「事務所から、30%を入れろと強制されたわけでもないのに、何でそんな契約にしたんだ」「30%も入れるなんて、多すぎちゃうか」などと言われましたが、僕は、そうは考えませんでした。前述したように、イソ弁は事務所の「居候」です。事務所のリソースを使わせてもらっている立場としては、どうしても、個人の仕事より事務所の仕事のほうが優先になります。「自分の仕事がありますので、事務所の仕事はできません」と断ることはできません。

 僕は、そんな状況になるのが嫌でした。所属する事務所に対して引け目を感じることなく、どんどん個人の仕事を引き受けて、1日も早く独立の足掛かりを作りたかった。だから、個人の仕事で得た報酬の30%を入れようと思いました。

 つまり、事務所のリソースの「使用料」を払う代わりに、僕は個人として自由に仕事をさせてもらえる「環境」を整えることにしたのです。一般的に、弁護士事務所の経費率は約55%とされているため、報酬の30%というのは、むしろ安いくらいだと考えていました。

 こうして、事務所に気兼ねすることなく自分の仕事を受けられる環境を整えた僕は、異業種交流会など、人が集まる場所に手当たり次第に出掛けては、自分を売り込みました。といっても20代の若造ですから、名刺交換を1回した程度では、顔も名前も覚えてもらえません。マメに会合に顔を出し、何度も何度も名刺交換を繰り返す中でやっと一つ、事件の依頼や顧問契約が取れればいいくらいです。

 だから、それこそ「数打ちゃ当たる」の精神で、数え切れないぐらいの人に数え切れないくらいの名刺を渡し、自作したパンフレットも配りました。

 当時、弁護士の世界には「広告宣伝をしてはいけない」というルールがありました。しかし僕は「そんなの、ただ競争を避けたいだけだろ。既存の弁護士が、新規参入の弁護士を排除して殿様商売をしたいだけだ」と思い、そのルールを突破することに挑戦しました。その後時代の流れには抗(あらがえ)ず、弁護士の広告宣伝も解禁となりました。

phot

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.