フィンテックは日本の個人投資の起爆剤に? Fintech協会理事の神田潤一氏インタビュー新連載・フィンテックの今(2/4 ページ)

» 2020年02月20日 07時10分 公開
[中尚子ITmedia]

――「投資よりも貯蓄」という傾向は今後も続くのでしょうか。

神田 人生100年時代といわれる今、老後の資金を準備するためには現預金だけでは不十分です。投資による長期的な資産形成を考えていく必要は確実に高まっていくでしょう。

 現在でも高齢者で投資している人が多いのは、バブル期などに周りの人が株式などに投資した結果、高いリターンを得ている様子を見て、自分でも経験してきたからだと思います。一方で、若い世代は投資している人が周囲に多くいません。どんな人がどうやって投資してどのように資産を形成しているか。投資のリアルや成功体験についての情報が発信されれば少しずつ変わってくるのではないでしょうか。

――そのような課題がある中で、フィンテックはどのような役割を果たしていくことができますか。

神田 まずは新しい形の投資サービスが挙げられます。例えば、キャッシュレス決済で買い物した際のおつりを投資に回す「お釣り投資」や、「ドローン」「VR(仮想現実)」など、注目のキーワードを選ぶとそれに関連する株式銘柄が提示されてそれに投資することができる「テーマ投資」などがあります。また、金融アルゴリズムを基に個人のリスク許容度にあわせてポートフォリオを自動で組む「ロボットアドバイザー(ロボアド)」や、単元未満株を売買できる「少額投資」など、さまざまなサービスが提供され始めています。

 ロボアドは自動的に資産のリバランスをしてくれるため、金融のリテラシーが高くない人でも始められます。また、経験がない人にとっては面白い銘柄を見つけるのも難しいですが、テーマ投資であればニュースなどで話題になっている会社に手軽に投資することもできます。何を選べばいいのか、考えるのが楽しいのでゲーミフィケーションの側面もあります。

 また、こうしたサービスはどれもスマホを使ってオンラインで手続きをほぼ完了でき、少額で始められる点が大きな特徴です。誰もが肌身離さず持っているスマホは、株価や資産残高をリアルタイムで見られるため、投資するためのデバイスとしてはうってつけです。これまで投資にあまり興味がなかった若い世代にとって、投資のハードルを下げ、投資の面白さを身近に感じることにつながるでしょう。

 アプリなどの操作が直感的で分かりやすいのも特徴です。フィンテックサービスを開発しているスタートアップ企業は概ね意思決定のスピードが速いため、デザインや操作性などを柔軟に変更し、投資家が使いやすい形にブラッシュアップしていくことも得意としています。

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