23年ぶり社長交代のイオンの過去と未来 衰退したダイエー、勢いを増すAmazonから分析する小売・流通アナリストの視点(4/6 ページ)

» 2020年02月20日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

イオンの収益源は20年で一変

 イオンの創業家である岡田家の有名な家訓に、「大黒柱に車をつけよ」というものがあるが、これこそ、スクラップ&ビルドの精神を一言で表したものであると言っていいだろう。創業家2代目の“治世”が終わるに際して、多くのマスコミの論評は、トップシェアの小売業グループを作り上げたのは素晴らしいが、これまでの延長線上での巨大よろず屋を作り上げたにすぎない、とか、デジタル化への対応に遅れ、といった批評がなされているようだが、家訓の精神は2代目の時代にも十分発揮されていたという見方もできる。これは、店舗のスクラップ&ビルドのみならず、事業単位でみても同様のことがいえる。

 イオングループの部門別営業利益を00年時点と19年とで比較すれば、その変化は一目瞭然に分かる。00年時点では、総合スーパー部門でほとんど稼いでいた状況は今や一変し、19年時点では金融事業やデベロッパー事業が収益の柱となっている。

20年で収益構造が一変したイオン(同社IR資料から筆者が作成)

 これは、「本業で収益を稼ぐことができなくなった不振小売が、片手間の副業で生活を立てている」という見方もあるだろう。一方で時代の変化に合わせ、大黒柱を別の場所に移して、収益を確保できる体制を構築したということでもある。低収益ながら多くの顧客との接点を確保している商業施設を軸に、デベロッパー、金融などの派生事業で収益を生み出す仕組みを築いたことは、大いに評価されるべきだと筆者は考える。

 いまや小売の王者となったAmazonですら、その収益の多くを非小売部門が稼いでいるのはご存じの通り。では、なぜもうかりもしない小売をAmazonが拡大し続けるのかといえば、決して小売の王者となることが目的なのではない。ECの拡大を通じて、膨大な個人の購買行動やその他のビッグデータを収集することにあることは今や周知の事実である。こうした目線でイオンの20年を見てみると、ちょっと違う側面も見えてくる。

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