「ヤフー・LINE」対「GAFA」は間違い? 本当のターゲットは金融業界だ!小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2019年12月04日 06時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 ヤフーとLINEの経営統合発表は、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)や中国IT大手など、世界の巨大プラットフォーマーが伸張することへの、強い危機感が背景だと解説されている。日本経済新聞の11月19日第1面は、そうしたトーンで解説しながら、ネット企業の時価総額ランキングを載せて、ヤフー+LINEの時価総額合計が米中大手の足元にも及ばないことを示していた。統合発表の席で語られた「東アジアから(米中に次ぐ)第3極をつくっていきたい」とする構想についても、米中大手との戦力比較から、かなり“懐疑的”なトーンで、「日本のネット史に残る動きだが、ダイナミックに動く世界の競争で勝ち抜くシナリオがはっきり見えたわけではない」と締めた。

経営統合を発表したヤフーとLINE

本当に「敵」はGAFAなのか

 確かに、米中IT大手の投資力は桁違いであって、今後も国内大手との力の差は開いていく一方であることは誰が見ても明らかな状況だ。そもそも米中はマザーマーケットの規模が全く違う上に、市場自体の拡大基調に支えられているのだから、基盤となる本国市場に恵まれない日本企業はどうしても防戦一方になるのもある意味仕方がない。ヤフーとLINEがどう、というよりも日本国内の情報系企業全てを統合しても、GAFAの資金力には遠く及ばないことなど初めから分かっている。そうした厳しい評価の中ではあるが、ヤフーとLINEの統合は、グローバルな規模だけでは測れない潜在力があるように思うのだ。それは顧客の重複ということだと考えている。

本当の“敵”はGAFAではない?(出所:ゲッティイメージズ)

 ヤフーはポータルサイトYahoo!を軸に多様なサービスを展開することで、国内に多くのYahoo! ID保有者を構築してきた。このIDは携帯キャリアであるソフトバンクとも相乗りしている。このグループのキャッシュレス決済を担うのが、PayPayなのだが、後発ながら消費税引き上げの直前あたりから加盟店拡大、利用者拡大に成功して、スマホ決済のトップに躍り出たことはご存じの方も多いだろう。

 「100億円相当あげちゃうキャンペーン」なる販促を大々的に展開して話題となり、ソフトバンク流の“焦土戦術”は相変わらずインパクトがあった。そうした派手な告知もさることながら、PayPayはソフトバンク、ヤフー連携での地味な下地づくりもやっている。例えば、ソフトバンクキャリアの長期契約者にはポイント還元があるのだが、この還元は基本的にはPayPayでしか受け取れないようになっているので、必然的にPayPayのアカウントを持たざるを得ない。そして、ポイントはPayPayで使うことになるが、たまるのは少額なので何か買い物をする際には追加チャージして使うことになる。ソフトバンクユーザーであるわが家でも、半ば強制的にPayPayをダウンロードすることになり、今では結構使うようになってしまった。

 並行して、消費税キャッシュレス還元のタイミングに、小売チェーンへの販促協力を惜しまず加盟店を増やしたPayPayは、100億円キャンペーンの第2弾として、ソフトバンク系キャリアの利用者などに、Yahoo!ショッピングの利用で数十%のポイント還元も行っている。要はYahoo! ID保有者に対して、さまざまなサービスを重複的に利用してもらうことで各サービスの利用者を囲い込んでいこうという狙いなのだ。

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