さて、ここからは妄想の世界でしかないのだが、こうしたIDデータの深掘りがマネタイズしやすいとしたらどんな業界なのかを考えてみた。ID単位で個人の生活の履歴がくくられるとすると、そうしたデータを真っ先に活用したい筆頭は、どうしても金融業界ということになるのではないだろうか。
個人スコアリングというものが、徐々に広がりつつあるようだが、データの精度を上げるには、個人生活履歴データを積み上げていくことが必要になるだろう。最も「滞在時間の長い」IDを持ったプラットフォーマーの提供する金融サービスが、個人金融サービスのおけるリスク(貸し倒れなど)を極小化できるだろう。そうなると、既存インフラに依存するこれまでの金融機関は、そのビジネスのかなりの部分をこうしたプラットフォーマーに持っていかれることになる可能性が高い。
ヤフー、LINEのニュースとほぼ時を同じくして新聞紙面で見かけたのが、地方銀行の収益悪化と、それに伴う新たな再編の動きだ。地域経済の縮小や低金利の長期化によって、収益源が失われつつある地方銀行は、軒並み減益トレンドに陥り、これまでにはなかった業界の外との再編も進み始めている。
SBIホールディングスは第4のメガバンク構想と称して、地銀をグループ化して再編の受け皿として名乗りを上げ、島根銀行に続き、先ごろ福島銀行とも資本提携を発表している。こうした厳しい環境にある地方銀行では、最近、再び不良債権処理費用(与信コスト)が倍増したことも、業績悪化の原因となっていると報じられている。
一時期、話題となったスルガ銀行は異常な事例だとは思うが、一般論でいえば、貸し出し需要が落ち込んでくると、限られた需要を奪い合って、貸し手側が過当競争に陥り、貸し出し債権の質は低下する(つまり、需要が十分な時代には貸さなかった相手にハードルを下げて貸してしまう)ため、貸し倒れリスクは上昇するというのが一般的だ。こうした厳しい経営環境が続いていけば、少しずつ与信コストが上昇していく傾向は避けられないであろう。その上、SBIのように地銀再編を進めようとする新規参入者もあるなかで、デジタルプラットフォーマーによる金融サービスが本格的に実施されるとなれば、地銀のみならず、個人向け金融のマーケットは再分割される可能性がある。
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