「ヤフー・LINE」対「GAFA」は間違い? 本当のターゲットは金融業界だ!小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)

» 2019年12月04日 06時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

ユーザーの「財布の中身」をチェックできる仕組み

 だから何だ、と思うかもしれないが、これがデータプラットフォーマーの王道の戦略である。例えば、あるYahoo! IDの検索履歴とソフトバンク携帯の位置情報、そしてPayPayの購買履歴、Yahoo!ショッピングの購買履歴を統合するだけでも、その人の生活が垣間見ることができることは想像がつくはずだ。特にキャッシュレス決済の情報を取得することは、これまでは把握できなかった、「グループ外での顧客のお金の使い方」までも蓄積することができるため、ビッグデータとしての価値が飛躍的に高まったといっていいだろう。

ユーザーの生活や考え方までデータを取れるプラットフォームに?(出所:ゲッティイメージズ)

 IDでくくったさまざまな行動の履歴を統合すれば、その人の生活や考え方が分かるようになる。これをビッグデータとして活用してマネタイズしようというのがプラットフォーマーの本質である。ここにLINEの持つSNSやLINE Pay、付随するサービスの履歴が統合されることの重要性は言うまでもないはずだ。ヤフー+LINEの強みは、ヤフー(+ソフトバンク)+LINEのサービスが、国内消費者の滞在時間が最も長いプラットフォーマーになれる可能性を持っているということである。形だけでいえば、Google(検索)、Amazon(ショッピング)、Facebook(SNS)を統合したIDをドメスティックに実現する可能性がある、という言い方もできなくはない。

 米中プラットフォーマーの経営資源からみれば、周回遅れの「井の中の巨人」かもしれないが、小なりといえども1億人超という規模の日本市場において、このように統合的なデータを収集できるとしたら、ID単位の分析に適したビッグデータを一定量収集できる可能性がある。ID単位でのマーケティングが可能になってくれば、新しいデータ活用やビジネスを生み出せる可能性がある。マザーマーケットが貧弱である日本のプラットフォーマーにも、「重複による深掘り」という活路はあるのではないだろうか。

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