では、IT企業がスポーツにおいて求められる「次の役割」は何でしょう。それは“異質”なものを受け入れる文化を浸透させることではないかと私は思います。これまで“異質”なものを受け入れることが苦手だったのが日本、そして日本のスポーツ界。野球は、球界再編など大きなうねりが起きたことでソフトバンク、楽天、DeNAという3つの“異質”なものを受け入れることになりましたが、今後エキスパンション(球団拡張)を行う可能性は低く、これ以上“異質”なものを受けいれることはマーケットの観点から困難が予測されます。福岡ソフトバンクホークス王貞治球団会長が16球団へ拡大することに賛同しているとのニュースも出ています。今後、実際に16球団へ拡張する話が進むのであれば、さらに“異質”なものを許容する意識が必要になってくるでしょう。
現状ではJリーグとBリーグに、どんどん“異質”な人たちが入ってきています。そこでハレーションを起こしながらも成功事例を出せれば、“異質”なものが受け入れられる土壌がつくられます。最近スポーツに参入したIT企業の経営者とスポーツの経営について話をする機会も多くありますが、彼らはスポーツ経営の中に“異質”なものの新たな存在感をつくり出したいと考えているように感じます。例えば、メルカリは鹿島アントラーズというビッグクラブの経営権を取得し、ここから一体何をやってくれるのか。私を含め、多くの人が注目しています。
「第1世代」としてソフトバンク、楽天、DeNAはスポーツに“異質”なものを持ち込み、「勝ち負け」とは離れたエンターテインメントビジネスとしてスポーツを運営することで、業界や社会の中で企業のステータスが上がる土壌をつくりました。何らかのパラダイムシフトを起こしてやれば、スポーツがビジネスとして成立し、社会的ステータスを獲得できるという成功事例はこうした「ITスポーツ第1世代」が証明したものです。
だからこそ、これから重要になるのはメルカリ、ミクシィ、アカツキなどの「ITスポーツ第2世代」です。彼らが次の世界をつくることができれば、さらに”異質“なものを受け入れる土壌が日本のスポーツに広がり、発展の礎となるはずです。スポーツをきっかけに、“異質”なものを寛容に許容する土壌や空気が日本中に広がっていくことになるでしょう。逆に、新たな成功事例を生み出せず、手を引いていくようだと、この空気は消えてしまいます。少しずつ門戸が開かれようとしているスポーツの世界で、「第2世代」が何をやって、どう次の「第3世代」につなげてくれるのか。実に楽しみです。
池田 純(いけだ じゅん)
早稲田大卒業後、博報堂等を経て2007年にディー・エヌ・エーに参画。
2011年に35歳という史上最年少の若さで横浜DeNAベイスターズの初代球団社長に就任。
2016年まで社長を務め、さまざまな改革を主導し球団は5年間で単体での売上を倍増し黒字化を実現した。
退任後はスポーツ庁参与、明治大学学長特任補佐、Jリーグや日本ラグビー協会の特任理事等を歴任。
現在はさいたま市と連携しスポーツで地域創生、地域活性化を図る(一社)さいたまスポーツコミッションの会長も務める一方、
大戸屋やノジマ等企業の社外取締役からITやゲーム業界、スタートアップ等の顧問も務める。
池田純公式サイト「Plus J」: https://plus-j.jp/
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