さらに驚くべきなのは、「ひとりでいること」が不安であれば、「そのように感じる意識そのものを変えれば良い」といった不安解消系の自己啓発本が出てきていることでしょう。「一瞬で不安が消える」的なアレです。要するに、「他人といること」にこだわるのは「寂しさ」という感情の問題だから、感情のプログラム自体を書き換えれば良いという発想なのです。
そうなると、もはや本人の当初の思いなどはどこへやら。誰とも関係しないことを潔しとする最強の「孤高のぼっち」へのレールが敷かれてしまいます。
ここで参照すべきポイントになるのは「人生の質」(quality of life=QOL)です。コミュニケーションの充実が健康や寿命に少なくない影響を与えていることは避けては通れない事実だからです。
ジョン・T・カシオポとウィリアム・パトリックは、『孤独の科学 人はなぜ寂しくなるのか』(柴田裕之訳、河出書房新社)で、「社会とのつながりがほとんどない人」は、「多くの触れ合いがある人」よりも死ぬ確率が2〜3倍高く、「虚血性心臓病、脳血管や循環器の疾患、ガン、さらには呼吸器や胃腸の疾患など、死に至るあらゆる疾患を含む、より広範な原因で死ぬリスク」が高いという研究結果を紹介しました。孤独な人は「自己調整能力の低下」を起こしやすいことが一因だというのです。
ジョギングに行くのは、終えたときに気持ちが良いかもしれないが、ほとんどの人にとっては、そもそもドアから外に出るには意志の力による行動が必要だ。そうした規律に必要な実行制御は孤独感によって低下する。孤独感には自己評価を低下させる傾向もある。他者に無価値だと思われていると感じると、自己破壊的行動をしがちで、自分の体をあまり大事にしなくなる。(前掲書)
わたしたちの健康状態は、「最低限の関係性」や「満足度の高いコミュニケーション」と深く結び付いており、「縁切り/縁結び」による「つながりの最適化」がその答えであることは間違いないでしょう。そのためには当然ながら行動力が必要です。
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