とはいえ、前述したように時代のトレンドは、ともすれば「強者」も「弱者」もフラットな消費社会の中に埋没させ、なんとなく消費者として承認されたような気になり、本当はどうにかしたいと思っている「つながりの最適化」を後回しにして、現状を肯定してくれるオピニオンに傾倒する作法を習熟してしまいかねません。
他方、昨今「おひとり様」を狙い撃ちにする不安ビジネスはますます巧妙化しています。マッチングアプリなどが「関係性の幻想」を売り付けていることが好例ですが、ソーシャルメディアなども「一時的な共感」で仲間を得たつもりになる点で、広義の不安ビジネスに当てはまる側面があります。
「つながりの最適化」は、やたらと気の合う友達と一緒で、トライ&エラーを経てようやく見つかるもので、アンテナを立てて能動的に機会を作るしかありません。要するに、それなりに手間も暇もかかるのです。
けれども、身の回りのガジェットやサービスは、タップ1つで「ウソのように何の問題もない風景」を見せてくれます。そもそもの話、わたしたちはシステムに全てを委ねる態度がデフォルト(初期設定)となってしまい、DIY的な「関係性」に価値を見いだしづらい世界を生きてしまっているのかもしれません。
1979年、奈良県天理市生まれ。大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。専門分野はテロリズム、ネット炎上、コミュニティーなど。著書に『テロリスト・ワールド』(現代書館)、『不寛容という不安』(彩流社)がある。
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