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» 2020年02月26日 08時00分 公開

孤独は「人生を豊か」にするのか?:「おひとり様」礼賛ビジネスの巧妙な罠――“幻想の安心”を買った先の破滅とは (1/4)

隆盛極める「おひとり様」向けビジネス。しかし筆者は自己啓発的な危うさをそこに指摘。「本来望まぬ孤独」への不安を無かったことにしていいのか?

[真鍋厚,ITmedia]

 ここ数年「おひとり様」向けビジネスが拡大しています。外食産業では、「一人客」専用の席を設けるお店が続々と現れ、アウトドア業界では、単独でキャンプを行う「ソロキャンプ」がブーム。専用の区画などを作っています。

 この動きは「おひとり様経済」の急成長といった消費トレンドの文脈で語られており、その背景には高齢化や未婚率の上昇に伴い単身者が右肩上がりで増加していることが挙げられます。加えて、働き方を含めたライフスタイルの多様化がそれを後押ししており、消費者からは「待ってました」とばかりに歓迎されています。

photo 続く「おひとり様ブーム」。しかしその裏に潜む真のワナと危機とは?(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

「社会的孤立」をカムフラージュ

 一方、近年「孤独」が「極上」であるとか、「人生を豊かにする」とか、「孤独」が「特権」であるだの「美しい」だの「レッスン」だの、果ては「男を強くする」だの「男の勲章」だの等々、孤独礼賛的な自己啓発本が乱発され、一定の支持を集める風潮が強まってきています。

 これは情報商材ビジネスの視点から見れば、いわゆる「ぼっち」であることが後ろ指を指されたり、冷たい視線を向けられたりするような世間の空気にストレスを感じ、自己肯定のロジックを切実に求めている承認不安を抱えた層への「不安マーケティング」の成果といえる面があるでしょう。

 この2つの傾向が重なることで危惧されているのが、「社会的孤立」のカムフラージュ化です。社会的孤立とは、家族や地域社会などといったソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の衰退によってもたらされるもので、リアルな人間関係が希薄になり心理的に落ち着ける居場所のない状態を指します。

 まず「おひとり様」「ソロ」と一口に言っても、その中身は人によってかなり幅があります。「孤独」は、そもそも「積極的な孤独」と「消極的な孤独」に大別できます。分かりやすく説明すると、人間関係に恵まれている人が、あえて「ひとりの時間」を過ごすのが前者、人間関係に恵まれていない人が、仕方なく「ひとりの時間」を過ごさなければならないのが後者になります。

 サービスを提供する企業の側からすれば、どちらも同じ「おひとり様」「一人客」であり、恐らくわたしたちも外見上の違いは分かりません。居酒屋で普段のパートナーや仕事仲間、趣味のサークルなどのつながりから離れて「久々のひとり飲みを愉(たの)しむ人」と、パートナーも友人もおらずTwitterのフォロワーとやり取りをしながら「いつものひとり飲みをしている人」を識別することは困難でしょう。

 これは、究極的には家族や仕事の有無というよりかは、「コミュニケーション強者」と「コミュニケーション弱者」の問題となります。

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