歴史を顧みれば、近代以前の中国では総人口の9割以上が農業に従事し、商業活動に従事する者は圧倒的な少数派で、その大半は信義を重んじていた。正義感や使命感が強かったというより、長期的にみればそのほうが得だったからである。
ところが、中華人民共和国になってからは職業選択の自由が失われ、伝統に断絶が生じた。80年代以降、徐々に自由化が進められるが、それならそれでまた別の問題が生じた。農業だけに頼っていたのでは生活が成り立たないとして、出稼ぎや商業に活路を見いだす者が続出したのである。
商業の大衆化というか、商売人の過剰供給というべきか、素養もノウハウもない者たちがこぞって商売に走ったらどうなるか。目先の利益にばかりが追求される事態は避けられなかった。
祖先が代々の商人の家なら大丈夫かといえば、こちらも例外とはなりえなかった。共産主義を掲げる独裁国家であるからである。独裁国家であれば、トップの考えが変われば制度も変わる。平然と180度変えることもある。民主主義国家のように選挙で国民に信を問い、国会で議論を尽くすという過程を経ることなく、経済政策は制度が目まぐるしく変わるのである。
ただの独裁ではなく、共産主義を看板にしている以上、富の偏在や金持ちの存在は本来否定されるべきもの。ならば富裕層が数千万単位で存在する現状は、あくまでトップの解釈変更によるもので、いつまた揺り戻しがないとも限らない。
このような状況では、いかに素養とノウハウを併せ持つ者でも信義を二の次にするしかなく、うまく立ち回るには国のトップが集う北京の中南海で何が話し合われているか、いち早く知ることが望ましい。
そのためにはあらゆる手段を駆使して、膨大なコネクションを築き、最新の情報を入手する必要がある。メディアを通じた発表があってから対策を講じるのでは、もう手遅れの場合が多いのだから。
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