フィンテックで変わる財務

2020年に変わる3つのフィンテック関連法改正 Fintech協会理事の落合孝文氏インタビューフィンテックの今(3/4 ページ)

» 2020年03月18日 07時14分 公開
[中尚子ITmedia]

1つの登録で証券、保険の商品などを販売できる「金融サービス仲介業」

――2020年には新しく、スマートフォンなどを通じて複数の金融商品を販売する「金融サービス仲介業」誕生することも話題になっています。

落合 これまで、銀行と証券、生命保険、損害保険を販売するには、それぞれ別のライセンスが必要で、それを複数のライセンスを組み合わせなければ金融全体を俯瞰(ふかん)したようなサービスを提供することはできませんでした。

 いくつものライセンスを取得するのは手間もかかるうえ、監督の担当課なども異なります。そのため、現在は銀行、証券、生命保険、損害保険のすべての代理・仲介のライセンスを持っているのは日本でたった4者しかいません。

 新しい制度では1つの登録で証券、保険の商品などを販売できるようになります。また、この新しい仲介業者は金融機関に所属する必要もないため、複数の金融機関との協業が進めやすくなると考えられます。

 ただ、新しい仲介事業者が取り扱う商品についてはデリバティブや信用商品、仕組み債などリスクが高いものなどは対象外になりそうです。また、消費者に金融商品の販売を仲介した場合、その商品を販売する金融機関からも手数料を取ることができますが、どうやって情報開示を行って中立性を保つかについては今後、具体的な手法についての議論が必要となるでしょう。

――消費者にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。

落合 消費者は複数の金融機関の金融商品を横断的に比較・検討することができるようになります。例えば、スマホのアプリで多様な商品を比較して購入できるようなサービスなどが想定できるでしょう。

 ただ、現状ではまだフィンテック企業の中でこういったサービスを手掛ようと表明しているところは多くありません。今後の法整備の具体的な内容が明らかになる中で、徐々に各社の検討が進むと思われます。なお、新しい仲介業はオンラインに限定されているわけではないので、既に対面で代理販売をしている企業で先に広がる可能性も十分にあるでしょう。

――資金移動業と新しい金融仲介サービスについて、それぞれいつから施行されるのでしょうか?

落合 法案については20年3月9日に閣議決定されました。通常の金融庁提出法案の審議スケジュールからすれば、例年と同様であれば、5月末から6月に改正されると推測されます。資金決済法関連の部分については、早ければ21年の4月に施行されるでしょう。

 新しい金融仲介サービスについては、資金決済法よりもさまざまな法整備、自主規制の整備等も含めて、より時間がかかる可能性があると見ています。そうすると、21年10月から12月くらいになる可能性があります。仲介については法改正と同時並行でフィンテック協会などが中心となって新しい団体を作り、自主規制のルールを作っていく予定です。

 3月24日には、フィンテック協会、電子決済等代行事業者協会、新経済連盟、CSAJによる、金融庁の担当官をお呼びしてのオンラインでの法改正内容の説明会も開催の予定です。今回の法改正で参入にご興味がある方は、このような機会への参加や、Fintech協会事務局へのお問い合わせを頂ければと思っております。

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