コロナショックによる実体経済の停滞懸念により、世界同時株安が発生している。米国市場では、3月9日に米国で史上初の取引一時停止措置である「サーキットブレーカー」が発動した。
このような動きを受けて、世界各国の中央銀行は再び金融緩和方向へ舵(かじ)を切らざるを得なくなった。FRBはこれまでの利上げムードから一転、実質ゼロ金利政策を展開。日本銀行も、ETFの購入可能枠を12兆円に倍増するという追加の緩和政策を打ち出した。
しかし、今回の株価下落はリーマンショックのような「金融から実体経済への悪影響」で引き起こされたわけではない。むしろ、「実体経済から金融への悪影響」という因果関係で整理されるべきである。そのため、「金融政策の効果は限定的だ」という声もある。現に各国の株価は中銀の金融緩和アナウンスに一瞬は反応したものの、下落基調反転の決定打には至らなかったようだ。
このような高い不確実性に支配されている相場状況においては、自分以外の市場参加者がどのような意思決定を行っているかを確認することも重要だ。そこで今回は、市場参加者ごとの売買状況が確認できる「投資部門別売買状況」データから市場参加者の動向を確認していきたい。
市場参加者の中で見逃してはならないのは海外投資家の存在である。海外投資家は日本市場において3分の2近い売買シェアを誇る市場参加者だ。3月第1週の東証1部売買代金をみると、全体の売買代金である32兆2999億円のうち、20兆8561億円は海外投資家によるものだった。
そして、ここ1カ月間で、現物株式と指数先物を最も多く売り越したのも海外投資家だ。海外投資家の特徴は、徹底した順張り投資にある。彼らは上昇相場であれば「買い」を行い、下落相場となれば「売り」を行う性質がある。最大の売買シェアを握る海外投資家が巨額の売り越しを行えば、相場全体が下落方向に傾くのもうなずける。
それでは、この下落でも買い向かっている市場参加者はどのような主体だろうか。それは個人投資家だ。その買い越し額は5331億円と、外国人の1358億円の売り越しを大きく上回る水準だ(ただし、海外投資家は現物株式だけでなく、指数先物も大きく売り越しているため全体の株価は下落しているかたちとなる)。
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