日本における個人投資家の特徴といえば、逆張り投資を好む点だろう。つまり、株価が上昇すれば「売り」、株価が下落すれば「買い」に転じるという性質がある。
最近1カ月における、海外投資家と個人投資家の売買動向を比較してみよう。これをみると、個人投資家と海外投資家の売り越し/買い越し額が、週次レベルで完全に逆になっていることが分かる。特にコロナウイルスによる株価下落が深刻になるにつれて海外投資家が株式を手放す一方で、個人投資家については株価の下落に呼応するかのごとく買い越し額が増えている。
この考え方を応用すると、投資部門別売買動向における「海外投資家」が買いに転じ、「個人投資家」が売りに転じる基調となれば底打ちのシグナルとなり得る。最新値である3月第1週の東証1部株式の売り越し代金は前週と比較して減少している。しかし、先物(日経平均)は2月第4週の−4868億円に続き、3月第1週の−3568億円と海外投資家の大幅な売り越しが、未だに継続している状況だ。
そのため、3月第2週以降の売買動向も合わせて確認し、個人投資家と海外投資家の売買動向に変化が生じたときに改めて判断する方が賢明かもしれない。
ここまで投資部門別売買動向から個人投資家と海外投資家の投資スタイルが真逆である特徴を確認してきた。これに加えて他の指標も併せて検討すると、底打ちの分析確度は高まっていくだろう。
例えば、信用評価損益率が先ほど検討した投資部門別売買動向とセットで分析されやすい。この指標は、信用取引のポジションを保有している個人投資家の平均的な損益率を示すものだ。
一般に、信用取引を行う個人投資家は、損失については長期的に耐えられるものの、評価益が出るとすぐに決済してしまうという性質がある。そのため、景気が良くても個人投資家の平均的なパフォーマンスはマイナスで推移するのが通常だ。
通常、大底となる場合の信用評価損益率は−15~−20%程度が目安であるといわれてはいるが、リーマンショック時には約−40%程度まで落ち込んだこともある。足元の信用評価損益率は−20.39%であり、通常の相場であれば「底」のシグナルではある。しかし、一部では「リーマンショック以上」ともいわれるコロナショックにおいて、「−20%程度で底打ちした」と考えるのはやや早計ともみられている。
そうすると、現段階では投資部門別売買動向からしても信用評価損益率の推移からしても底打ちの明確なシグナルが出ているとはいえない。株価の乱高下は、まだしばらく続きそうだ。
中央大学法学部卒業後、Fintechベンチャーに入社し、グループ証券会社の設立を支援した。現在は法人向け事業コンサルティングを行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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