トップインタビュー

すべてのビジネスはサブスクへと向かう 専用の管理基盤Scalebaseを提供するアルプの狙い(2/2 ページ)

» 2020年03月23日 13時30分 公開
[斎藤健二ITmedia]
前のページへ 1|2       

顧客ごとに変わる値段、変わる契約 でも課金は継続する

 サブスクビジネスでは、顧客単価向上やLTV(生涯価値)の増加のために柔軟な価格変更を行ったり、オプション機能追加によるアップセルを行ったりする。また、顧客数拡大のためには、決済手段を増やすことや、値引きなどのキャンペーンも重要だ。これは、歴史あるサブスクビジネスである携帯電話事業者の料金プランを見るとよく分かる。

 しかし、こうした取り組みは裏側の管理の複雑さを招く。顧客ごと、また販売したタイミングごとに値引きを行ったり、新たな課金プランや決済方法を提供したりすれば、商品マスターが爆発的に増加する。顧客ごとに支払い条件や金額が違っていたら、個別に請求書を作るだけでもたいへんな作業になる。これが、現在のサブスク事業者の内部で起こっていることだ。

 Scalebaseでは、顧客ごとに異なる契約、価格情報を持ち、新たな契約に変えてもバージョン管理できるところに特徴がある。課金モデルにしても、定額だけでなく、従量制、段階従量制、下限付き従量制、上限付き従量制、変動従量制など、多様な課金プランを設定できる仕組みを盛り込んだ。

サブスクでよくある複雑な従量料金設定についてもパターンを用意してある

 サブスクの商品は、プランごとに決済手段、課金サイクル、課金モデル、値引き情報、価格変更情報など、さまざまな要素の掛け算になってくる。従来の管理手法であれば、新たな課金方法を追加すると、全商品について新たな課金方法に対応した商品データを新規に追加することになる。Scalebaseでは、請求ロジックを疎結合にしたことで新要素を付け加えるだけで対応でき、商品追加を容易にした。

 「サブスク事業者は皆、より良いサービスを作ることに集中したい。なのに、裏側の管理コストが上がってしまっている。サービスに集中してもらえる基盤を提供したい」と伊藤氏。

 2019年10月にリリースしたScalebaseだが、現在の導入企業はMRR(月間経常収益)1000万円前後の中堅企業中心に10社弱程度。月額十数万円からの費用で提供している。しかし、マザーズ上場規模の企業でもしっかりとした管理基盤を持っているところは少なく、そうした急成長企業への導入に向けて開発を進めているという。

SaaSで重要になるKPIも、内部にデータを持っているため、分析が容易だ。外部の分析ツールにデータを渡すことで、さらに詳細な分析が可能になる

すべてのビジネスはサブスクへと向かう

 従来の、製品を売って終わりのモデルから、顧客設定を保ちながら価値を継続して提供していく方向に、あらゆる企業のサービスは変わっていっていると伊藤氏は見る。あらゆるビジネスのサブスク化だ。

 「例えば水ひとつとっても、物売りであれば1本100円で売って終わりだが、この水を月額50円で毎月送るとなった瞬間に、今月は10本、20本と変化が起きたり、内容のアップグレードが起きたりする。しかし、モノ売りの管理基盤は、契約を変更するような仕組みになっていない」(伊藤氏)

 3月23日には、DNX Ventures、電通ベンチャーズ、ANRI、PKSHA SPARX アルゴリズムファンドから、総額3億1500万円の資金調達を実施した。今後、世の中で所有から利用へのモデル転換が進んでいく中で、賃貸や保険などのビジネスもサブスク的な方向に進んでいく。さらに、製造業やECなどもビジネスモデルはサブスク化していく。

 広がるサブスク市場に向けて、「アップセルをよりやりやすく。そしてバックオフィスを効率化する。管理基盤といっても、収益を最大化するための基盤にしていく」と伊藤氏は展望を話した。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.