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» 2020年03月28日 05時00分 公開

人口減少時代にリニアは本当に必要なのか?「スーパーメガリージョン」誕生の意義(2/4 ページ)

[武田信晃,ITmedia]

リニアで3つの都市圏が1つになると、これまでになかったものが生まれる

 まずは東名阪の3大都市圏が1つの都市圏になることについて、独立行政法人経済産業研究所の中島厚志理事長に質問をぶつけてみた。

photo 中島厚志(なかじま あつし)独立行政法人経済産業研究所理事長。1952年生まれ。1975年東京大学法学部卒業後、日本興業銀行入行。パリ支店長、パリ興銀社長、執行役員調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員調査本部長などを歴任。2011年より現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)、『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など

 「東京圏は1960年からすでに世界一の都市圏です。集積の高まりは、経済効率や生産性の向上をもたらします。例えば、人口密度が倍になるとサービスの生産性が1〜2割上がることが当所の研究で分かっています。東名阪が1時間圏で結ばれることにより誕生する人口7000万人のスーパーメガリージョンは世界史上類例がありません。どのような経済的インパクトが起こるのかという実験としても大きな意味を持ちます」と統合する意義を語る。

 「人口集積はイノベーションを加速させます。研究で分かっているのは新幹線が開通されると、その地域の特許数が増えることです。時間と距離が短縮され、人と人との交流が緊密になり、知見がより集まることで『化学反応』が発生し、新しいものが生み出されるからです」。実際、経済産業研究所の研究で、長野新幹線開業後に沿線エリアの特許出願数が4.6%増加したことが明らかになっている。

photo 長野新幹線の開業後、沿線事業所の特許出願数は4.6%増加した。図1は1事業所あたりの平均特許出願数について、長野新幹線沿線事業所(treatment)と、その他(control)を比較した図。1998年の開業前のトレンドについて、両者はほぼ同一であるのに対し、開業後、長野新幹線沿線事業所(treatment)の平均特許出願数がその他(control)に比べて増加している(経済産業研究所のWebサイト「高速鉄道と知的生産性」より)

 「イノベーションを起こすには多様性が必要です。貿易も互いに同じものをもっていれば貿易をする必要がありませんが、別のものを保有しているからこそ、自国にはないものを求めて貿易が活発化され、互いのエリアが潤ったり発展したりします。リニアの沿線都市を例に出せば、東京、名古屋、大阪はそれぞれ都市の性格が異なりますから、1+1+1が3以上になるはずです」と力説する。

 前出の都市経済学者であるリチャード・フロリダ氏も「現代のクリエイティブ経済における経済の成長の真の原動力とは、才能と生産性に満ちた人々の蓄積と集中化である。彼らが特定の地域に寄り集まって住むことで、新しいアイデアが生まれ、その地域の生産性は増加する。集積力により、都市や地域は経済成長の真の動力源となる」と集積の効果について著書『クリエイティブ都市論』で示している。

 中島理事長にストロー効果への懸念について尋ねたところ、「東京と同じことを目指すとストロー効果で東京に吸い上げられてしまう可能性が高まります。スーパーメガリージョンでは“多様性のある中での7000万人という都市圏になる”ことが重要です。つまり、沿線各都市がもつその都市ならではの特長を強化するのです。東京圏の強みは金融、IT、本社機能などです。名古屋圏は自動車、航空などのものづくり産業やAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)に強みをもっています。

 大阪圏は芸能をはじめとした多彩な文化や、医療・ライフサイエンス分野に強みがあり、商業都市でもあります。京都や奈良もあって歴史的観光資源も豊富です。そうした特長を生かして、外国人をそれぞれの魅力を用いて呼び寄せれば、それぞれの都市圏はさらに活性化されます。独自性を意識することが、1つの文化圏にとどまらないスーパーメガリージョンが誕生することになるのです」と、外国人を引き付けることは、海外のスーパーメガリージョンと競争するうえでも重要だと指摘する。

photo 大阪圏は芸能をはじめとした多彩な文化や、医療・ライフサイエンス分野に強みがある商業都市だ(写真提供:ゲッティイメージズ)
photo 外国人観光客が多く訪れる心斎橋(写真提供:ゲッティイメージズ)

 「東京圏は既に世界一の規模ですが、これが7000万人のスーパーメガリージョンとなれば、世界でこれまでにないことが起こるはずです。起きないとおかしいのです」

 中島理事長が例に出したのは秋葉原だ。

 「フィギュア、AKB48、メイド喫茶、電気街などは10万人都市では十分なお客さんがいないので成り立ちません。オタク文化は100万人単位でも無理でしょう」と話す。

 「1000万人位単位ですか?」と筆者が問うたところ、「そうです。だからできたのです。世界にないような文化が生まれたのは東京圏が3000万人超という人口を抱えていたからです」と人口規模の大きさのメリットを強調した。確かに人口の1%が興味をもつ商品やキャラクター、サービスがあったとしても、100万人都市では1万人のマーケット規模となるが、7000万人都市では70万人ものマーケットが存在することになる。需要があれば、それを取り込もうとして創意工夫が生まれ、イノベーションも生まれやすくなる。

 「日本に残しておきたい文化とか伝統工芸も再生するでしょう。これがリニア効果です」

photo フィギュア、AKB48、メイド喫茶、電気街などは京圏が3000万人超という人口を抱えていたから成立した(写真提供:ゲッティイメージズ)

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