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人口減少時代にリニアは本当に必要なのか?「スーパーメガリージョン」誕生の意義(3/4 ページ)

» 2020年03月28日 05時00分 公開
[武田信晃ITmedia]

山梨、長野、岐阜が通勤圏になる

 中島理事長は続ける。

 「2時間半は出張圏ですが、1時間は通勤圏になります。今回リニアのルートには山梨、長野、岐阜などが含まれます。私は、こうした駅の周辺はミニ東京駅、ミニ品川駅のようになってはいけないと思います。駅から少し離れれば、思いっきり山の中、思いっきり森の中ということが大事なのです。つまり、そういう環境になれば世界最大の都市から三十分程度のところに避暑地やリゾート地ができるということになります」

photo 長野県の飯田市の風景。飯田市の近郊には「日本一星空が美しい」と形容される阿智村がある。風光明媚なところで在宅勤務をし、出社が必要なときだけリニアで上京する、といった働き方も可能だ(写真提供:ゲッティイメージズ)

 リニアの山梨県駅(仮称)などの中間駅は、ミニ東京としての発展ではなく、前述のように地域の特性を生かした開発をするべきだと話す。

 「30分のところに気候が違うリゾート地、という環境は、パリ、ロンドン、ニューヨーク、上海にはありません。海沿いを走る東海道新幹線とは違いリニアは山間部を通りますが、そこを通ること自体を価値にしてしまうのです。繰り返しますが東京になってはいけないのです。大自然の中に研究所を造るというのも良いかもしれませんね」

 「これまで単身赴任だった人が東京や大阪から地方に通うことや、地価の安い中間駅周辺に広々とした住宅を購入して住むといったことも可能になります。土地や物価が高い東京圏で介護施設を作る必要もないのです」とライフスタイルの変化についても言及した。確かに中間駅に住めば、山登り、温泉、ゴルフ、ぶどう狩りといった都会ではできないレクリエーションが手軽に楽しめる。

 ちなみに、リニアの運賃・料金は現段階で未定ではあるものの、2010年にJR東海が公表した長期試算見通しでは、東京〜名古屋間で現行から+700円、東京〜大阪間で+1000円という前提を置いている。少なくとも東海道新幹線の運賃・料金から大幅に上がることはなさそうだ。

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