ある営業ツールが、従来の営業を「オールド営業」と揶揄(やゆ)したCMを流しているが、SaaSを活用した効率的なバックオフィスが増えてくれば、作業を黙々とこなすだけの従来のバックオフィスは「オールドバックオフィス」と呼ばれるようになるかもしれない。SaaSによる効率化や自動化で、バックオフィスの担当者が「作業」する必要性が薄れていくようになることは間違いない。
そうなると、バックオフィス人材に求められるスキルも大きく変わる。これまでは、黙々と正確に作業ができる人が向いていると考えられてきた。これからは、経理や労務などに関する知識や専門性に加えて、SaaSを活用して効率的な業務フローを構築するITリテラシーや業務構築能力が必要不可欠になってくる。
決まったルールに従って正確に処理することに関しては、人間よりもシステムの方が得意だ。バックオフィスの担当者は、全体の処理手順を整えたり、処理されたデータを活用して経営戦略を支援したりといった業務に注力できるようになる。
システムに仕事が奪われるのではなく、システムによって仕事の仕方が変わる、というのが正しい理解だろう。日本の労働人口がこれから減少していくことが避けられない以上、バックオフィスも従来と同じやり方をしていたのでは当然に破綻する。SaaSによって中小企業でも効率的なバックオフィスが構築できるようになり、オールドバックオフィスで業務を行っている企業との生産性は数倍から数十倍も開いてしまう。
中小企業にとっては、月額数千円から数万円の費用で導入できるSaaSは、非常に心強い存在だ。これらのソフトは地味に見えて会社を支える重要な土台となる。ここを理解することはビジネスを理解することにつながる。
SaaSを導入して効率化された企業もあれば、逆にうまく活用できずに生産性が下がってしまったという企業もある。その違いはどこにあるのか、どうすればうまくのか。次回からはSaaSによる効率化に成功した企業、失敗した企業のケースを具体的に解説していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング
編集部おすすめブックレット