新型コロナと緊急事態宣言があぶり出した、鉄道沿線ビジネスの困難(2/4 ページ)

» 2020年04月11日 07時27分 公開
[小林拓矢ITmedia]

 関東圏の多くの私鉄は、この両者をあわせた形になっている。都心へは通勤輸送を、郊外へは観光などの輸送で利益を上げ、その周辺のビジネスでグループ全体をうるおすという形になっている。

 例えば京王電鉄は、都心に向けた通勤客の輸送のほかに、休日には府中競馬場への輸送や、多摩動物公園への行楽客の輸送なども重要な目的としており、高尾山薬王院への参詣客の輸送も、大切な役割となっている。

 そのために適したサービスを提供する、というのが重要なビジネスモデルなのだ。京王沿線の人が高級なものを買いに行くときには、新宿の京王百貨店に行く(なお聖蹟桜ヶ丘にも京王百貨店はある)。しかしその京王百貨店新宿店は、「緊急事態宣言」により4月8日から営業を停止している。行楽に行こうと思っても、都立の多摩動物公園は閉まっており、京王電鉄が運営する「京王れーるランド」や「京王あそびの森 HUGHUG」も休館である。また、高尾山薬王院最寄り駅である高尾山口には、「京王高尾山温泉」があるものの、こちらの利用も減っているだろう。なお営業は行っている。

 テレワークの促進により、定期券利用者が減り定期券を購入する人が少なくなるだけではなく、出社する人も少なくなり利用客が減る。沿線の観光施設や商業施設が休館することにより、土休日の利用者も少なくなる。

 鉄道利用の促進と、沿線生活でのアクティビティの向上を組み合わせて企業を発展させてきた――。しかし、多くの人が家にいるようになり、さらに「緊急事態宣言」が出たことによって外出を減らさなくてはならない事態だと、そのシステムがかえってマイナスになる。

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