新型コロナと緊急事態宣言があぶり出した、鉄道沿線ビジネスの困難(3/4 ページ)

» 2020年04月11日 07時27分 公開
[小林拓矢ITmedia]

行楽・寺社参詣輸送も打撃

 日光東照宮をめざす東武鉄道や、成田山新勝寺をめざす京成電鉄にもこの状況は大きな打撃を与えている。行楽を兼ねた寺社参詣も減少し、祈る人は自宅で祈ることになる。今年のゴールデンウイークはまるまる「緊急事態宣言」の期間なので、行楽客輸送も減少することになるだろう。

 同じような状況は小田急電鉄にもいえる。小田急は、都心への通勤輸送に力を入れるだけではなく、箱根や江の島への行楽輸送にも力を入れてきた。その象徴が「ロマンスカー」だ。もともと、昨年の台風19号で箱根登山鉄道が被災し、地域に打撃を与えていたところに、今回の新型コロナウイルスによる観光客減少により大きな打撃を受けることになった。

 小田急グループの中には箱根登山鉄道を有する小田急箱根グループもあり、箱根への観光輸送をになうバスの運行もそこで行っている。また、観光関連ビジネスへの影響も大きい。

 行楽などでも、鉄道事業者は鉄道だけではなく関連ビジネスを展開しており、それらが一気に打撃を受けることになる。ふだんは相乗効果でよい方向に向かっていたグループ全体のビジネスが、この状況下ではまとめて悪い方向に向かっている。

西武グループの弱点

 そんな中、もっともつらい状況にあるのが西武グループだろう。西武はレジャー関連を強みとし、グループ内でホテルや遊園地を経営し、プロ野球の球団・埼玉西武ライオンズも保有している。しかし、「としまえん」や「西武園ゆうえんち」は休業、プロ野球も開幕の見込みが立たないとなると、その関連輸送自体が消滅することになる。

 西武は秩父観光なども含めて行楽ビジネスに力を入れてきたものの、そういったことが一切不可能になる。

 西武ホールディングスの株価はここ3カ月で1800円程度から1200円程度に減少し、その他の鉄道事業者に比べても値下がり幅は大きい。なお、成田空港輸送を抱える京成電鉄も、似たような株価の動きを示している。その他の鉄道事業者は、この状況でなんとか株価を戻しているにもかかわらずだ。

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