新型コロナ感染追跡とプライバシー保護を両立 AppleとGoogleが共同開発する技術とは?

» 2020年04月11日 16時33分 公開
[本田雅一ITmedia]

 新型コロナウイルス感染が広がる中、AppleとGoogleは各国の公衆衛生当局が感染リンクを追うための技術を速やかに共同開発すると発表した。

AppleとGoogleが共同で新型コロナ対策へ

 開発する技術は公衆衛生当局に提供され、それぞれの国ごとにリリースされるアプリをスマートフォンに導入することで実現される。この発表におけるポイントは、不特定多数が集まる場所を介した感染リンクの追跡と”プライバシー保護”だ。

 無症状の感染者がさらなる感染を広げないよう、感染リンクを追いかけていくことが重要であることは、すでに多くの読者がご存じのことだろう。しかし、イベント会場など、不特定多数の人が集まる場所での接触者を割り出すことは不可能だ。

 また、感染リンクの追跡は、本人のモラル意識に依存する部分が少なからずある。特定の場所に行ったことを言いたくない、特定の相手と会ったことを秘密にしたい、といったケースや“知人のお店に迷惑を掛けたくない”といった理由で、濃厚接触の情報提供をしない感染者もいる。

 AppleとGoogleが開発する技術を用いれば、こうした感染リンク追跡が難しいケースでも濃厚接触者に感染の可能性について通知できる。

不特定多数の人が集まる場所で感染リンクを追跡できるか(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

スマホを用いた問題解決に必要な“プライバシー保護”

 スマートフォンを用いた感染リンクを追跡するツールは、新型コロナウイルスに関連して中国、シンガポール、韓国が提供している。しかし、位置情報までを把握する追跡ツールであるため、非常事態とはいえ国が国民の行動を監視する構造を取っていた。非常事態になし崩し的に監視・管理社会へとつなげる意図があるのではと懸念を抱く人もいるだろう。

プライバシー保護は?

 今回、両社が共同開発する技術は、異なる人が使う端末が同じ場所に一定以上の時間(10〜15分程度)あった場合に、相互に端末を特定できる識別子を記録する。識別子は利用者の個人情報や位置情報が含まれない匿名情報としてクラウドにアップロードされる。

 アップロードされた匿名の識別子は14日間、クラウド上に保存されていき、新型コロナウイルスへの感染が判明した場合は、感染者との濃厚接触の可能性があることが各端末へと通知される。この場合、通知先には元の感染者が誰かといった個人情報は提供されない。

 端末内で濃厚接触の判断が行われ、匿名かつ位置情報を伴わない形であるため、プライバシーを侵害しないかたちで感染リンクを追うことができるわけだ。

 新技術を用いたアプリのリリースは5月になるという。そのころには感染者がピークアウトし始める国も多くなってくるだろう。しかしピークアウト後も、特効薬やワクチンが開発されるまでは、感染対策は続けなければならない。その際の社会的負荷を軽減することが期待される。

将来は基本ソフトに組み込まれスマホの基本機能に

 AppleとGoogleは、それぞれiOS、Androidの基本機能として、感染リンクを追いかけるための機能を基本ソフト内に組み込み、各国の感染対策当局がそれらを利用可能にしていく予定だが、いずれも利用者自身がオプトインせねばならない。

 技術的な枠組みもさることながら、位置情報が記録されないことや、プライベートな情報を追跡されないこと。自分自身の健康面でのリスクを下げることなどを、幅広く周知させることも重要となってくる。

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