お店のミライ

自粛要請に振り回される「3密4業態」 ライブハウスやナイトクラブの“悲痛な声”に迫る長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)

» 2020年04月14日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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銀座への影響は

 銀座の飲食店、約370店が加盟する「銀座料理飲食業組合連合会」には、日本料理をはじめ各国の料理店、カフェ、バー、クラブ等が加盟しているが、ほとんどが休業に入っている。

 「ナイトクラブはもちろん、全てのお店が非常に厳しい状況」(同組合連合会)と悲鳴を上げている。通常なら3〜4月は会社の異動の時期で接待需要が増えるが、クラブは顧客が来ないので、3月から自主的に休んでいるそうだ。

 クラブに行く人が、ホステスと同伴で行く飲食店も苦しい。歓送迎会が次々とキャンセルとなり、インバウンド客がほとんど消滅したため、予約のあるときだけ開けている店もある。食材のロスが多く、仕入れの調整にも苦慮している。

銀座の多くの店が厳しい状況に追い込まれている

 大阪の北新地にある約440店のクラブ、ラウンジ、飲食店が加入する「北新地社交料飲協会」では、「9割以上の店が閉めている。クラブは、緊急事態が宣言される前より、規模の大きな店舗や老舗から休業していった。飲食店では、先に閉めている店もあったが、緊急事態宣言が出されてから急に閉める店が増えていった印象だ」(同協会・広報)という。従業員への新型コロナ感染リスクと、実際に顧客が激減しているので閉めた方が経費がかからないことを考慮している。

宙ぶらりんで釈然としない

 3密4業態は、国や都府県からの要請で自粛が求められているが、営業禁止が命じられているわけでない。宙ぶらりんで釈然としないというのが、多くの現場の感情だ。

 東京都のように、自粛すれば協力金が支給される自治体もあるにはあるが、基本的に何の補償もない状態で休業している。全国知事会では自粛を求めるなら損失補償をするべきだと国に迫ったが、却下されてしまった。

 「東京都議会に陳情書を出し、東京都知事室、自民党、都民ファーストの会、国政の岸田文雄・自民党政調会長、中小企業庁にも、お願いに行っています。コロナが収束するまで、人件費、家賃をどうやって払っていけばいいのか。組合員の8割から9割がもう困っています」と窮状を訴えるのは、2500人近くの組合員で構成される「東京都社交飲食業生活衛生同業組合」だ。

 給与の幾分かを肩代わりしてくれる国の雇用調整助成金、有利な無担保・無利子の融資などもあるが、年度初めという状況であり、どの役所の窓口も混んでいる。電話すらなかなかつながらない状況だ。うかつに出かけていけば、3密状態の役所内で感染しかねない。

 いったいいつまで営業自粛を続ければいいのか。再開しても顧客の支持が得られるのか。3密4業態の経営者やスタッフは、新型コロナの流行が長期化すれば店を畳まざるを得ず、失業に怯える不安な日々を送っている。

アジア最大規模の歓楽街である歌舞伎町も閑散としている

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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