オンライン教育「周回遅れ」の日本 “コロナ休校”で広がる、埋められない空白世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)

» 2020年04月16日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

オンラインでも「学校と同じ時間割」で授業

 欧州に目を向けるとどうか。知人のスイス人に話を聞くと、そのレベルの違いに驚く。スイスは現在、ロックダウンにあり、5人以上で外にいてはいけないことになっており、学校も休校だ。

 知人は11歳と13歳の娘がいる共働きの世帯だが、娘には学校からiPadが無料で支給されており、米マイクロソフトのビデオ通話アプリ「Rooms」を使って授業が行われている。しかも、学校に行っているのと同じ時間割で授業が朝から行われているという。いわば、オンライン学校といったところで、場所とコミュニケーションの方法が変わっただけだ。課題などは電子メールで随時送られてくる。

 ビデオ通話アプリも今は無料で使えるものが少なくない。無償で提供されるタブレット端末なども、長い目で見れば、名前や製品を覚えてもらうことになり、メーカー側にも悪い話ではない。

タブレット端末などを無償や安価で提供する国も少なくない

 シンガポールでは教育省が主導して4月1日からオンライン教育を始めた。小学生の場合、20万人が自宅から授業を受けている。学年によって違ったスケジュールで、教育省が作ったプログラムをこなし、課題もネットで送られてくる。YouTubeを見ながら、体育の授業も行う。小学生は毎日4時間、中学生は5時間、それ以上は6時間の授業を受ける必要がある。そしてPCを持っていないなど、特別な事情がある家庭の子供は、学校でオンライン授業を受けるが、数が少ないために「ソーシャル・ディスタンス」も守れる。

 中東のエジプトでも、オンライン授業は行われている。エジプトは決して裕福な国ではないが、少し前から国連の国際復興開発銀行(IBRD)からの5億ドルのローンによって教育制度の改革を進めてきた。その一環で、2018年には韓国のサムスンから安価でタブレット端末を提供してもらい、中高生に無料で配ってきた。それが今回、オンライン教育に使われている。ただ、通信などのインフラが未熟なために、授業を受けられない子供もいるという。その課題をどうクリアしていくのかが問題視されている。ただ少なくとも、オンライン教育を続けようとする意思を感じられる。

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