コロナ不況を乗り切るために「コンビニバイトの時給アップ」が必要なワケスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2020年04月21日 08時34分 公開
[窪田順生ITmedia]
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やはり、「賃上げ」しかない

 医療現場で働く看護師、介護施設のスタッフなど不眠不休で働く人たちはもちろん、マスク、医療機器などを製造している人たち、物流を支えるトラックドライバー、そしてスーパーやコンビニ、ドラッグストアで働く人たち。このように社会に欠かせないインフラを維持してくれている人たちの多くは「低賃金・重労働」を強いられている。

 彼らの多くは、親方日の丸で終身雇用が約束されている公務員などではなく、来月の収入も見えないバイトやパート、社員でも1年ごとの契約というような不安定な雇用の方も少なくない。

 コロナパニックが終わっても間違いなく次のウイルスが登場する。南海トラフや首都直下型地震など、壊滅的な被害をもたらす自然災害も後には控えている。このような危機に立ち向かうためには、日本を強くするしかない。それはつまり、社会インフラを支える労働者を支えていくということだ。と言っても、「いつもありがとう」とねぎらいの言葉をかけるだけではダメだ。彼らが安心して働ける給料と労働環境を整備しなくてはいけない。そのための第一歩として、「低賃金・重労働」の象徴であるコンビニバイトの時給アップをしなくてはいけないのだ。

 コンビニバイトやスーパー、トラックドライバーなどの賃金を上げると聞くと、日本では脊髄反射で「中小零細企業がバタバタ潰れて、失業者が溢れるぞ!」と騒ぐ人たちがいるが、そうやって「労働者保護」より「経営者保護」を続けてきた結果が、「宅配クライシス」「コンビニクライシス」と騒ぎになった脆弱な社会インフラをつくってきたことに、そろそろ気付くべきだ。

 日本は高度成長期以降、「低賃金・重労働」でかろうじて成り立っている中小企業に税金を投入して助けてきた。それを50年続けてきた結果が、「低賃金・重労働」を強いられる労働者が大量に溢れる今の日本だ。

 この”低賃金社会”が「危機」に滅法弱いことを、コロナパニックは浮き彫りにした。支えるべきは経営者ではなく、3220万人の低賃金労働者だった。その間違いを日本社会が受け入れていくためにも、まずはコンビニバイトの時給アップを断行すべきではないのか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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