とにかく、トラックの運転席から見える物流業界の現実や、その先にある車にまつわる社会問題などにも切り込んでいる。詳細は同著に譲りたいが、筆者が本の中で特に気になったのは「クルマ業界の女性観」という話だった。そこに冒頭の「トラガール」についての考察が登場するのである。
橋本氏に言わせれば、「このプロジェクトには全く賛同できない」という。理由は2つだ。
1つ目の理由は、「トラガール」というネーミングが時代に逆行しているという。「看護師」「キャビンアテンダント」など業界の性差をなくそうとしている時流に反しているからだ。
確かに、日本でも「看護師」「キャビンアテンダント」「保育士」「助産師」という呼び名が使われるようになって久しい。男女雇用機会均等法による、男女は平等に扱われなければならないという考え方からそう変わってきたのだが、トラック・ガールつまり「トラック女」と呼ぶことはまさに一昔前に逆戻りしているといえる。
さらに筆者が付け加えるとすれば、トラックを運転する女性を「ガール」と呼んでいる点にも違和感がある。大人の女性をガールと呼ぶのは感心できないし、おそらく失礼だと感じる人もいるのではないか。海外の英語圏では冗談っぽく大人の女性や年配の女性を親しみを込めて「ガール(ズ)」と呼んだりすることはあるが、バリバリ働く女性を国の行政機関が「ガール」とひとまとめにするのには違和感がある。とにかく、トラガールはポリコレ的にも問題になりそうなネーミングだといえる。
2つ目の理由は、国交省のプロジェクト公式サイトに使われている「ピンク色」だという。女性をピンクのイメージで縛ることは、物流業界の過酷な実態を軽視しているという。そんな生易しい職場ではないということだろう。
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