アメリカで白熱する「お尻洗浄器」市場、なぜ?(2/4 ページ)

» 2020年05月07日 08時29分 公開
[石塚しのぶINSIGHT NOW!]
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「コロナ特需」により潤うアメリカの温水洗浄便座/ビデメーカー

 コロナショック以前に、ネットで細々と販売していた新興ビデメーカーは、突然の需要の高騰に笑いが止まりません。中国の工場で作らせている製品を空輸でアメリカまで運んでいる会社もあると聞きます。

 ただし、急騰した需要レベルが長期的に持続可能かというとそれはわかりません。直近の状況に目をつけ、多くの大手小売・流通業者が自社ブランドの展開をはやくも検討しているといいますし、また、中国からの安価な模造品の流入も既に始まっています。

 にわかに注目が高まった「ビデビジネス」について語るアメリカの記事には、当然、日本のTOTOの名前も登場しますが、残念ながら、TOTOはアメリカでは「知る人ぞ知る」のブランドであり、知名度はそれほど高くありません。しかし、アメリカのビジネス誌上で、TOTOは「ビデビジネスにおけるiPhone」などとも称され、それなりのリスペクトを得ています。

 TOTOのアメリカへの進出は1990年にさかのぼりますが、この「ニッチ製品」に目をつけ、アメリカのブランドであるKohler(コーラー)などが2000年代の初めに国産の温水洗浄便座の販売を開始しました。

 コロナショックを機に、アメリカにおいて、温水洗浄便座やビデの普及が進めば、トイレットペーパー市場の売り上げに大きな影響を及ぼすことになる……とさまざまな予測が立てられています。温水洗浄便座やビデが普及している他国の例によれば、これらの製品を使用する世帯では、使用後のトイレットペーパー消費量が最大7割まで減少する傾向にあるそうです。

 日本での「ウォシュレット」をはじめとする温水洗浄便座の普及率は80%。しかし、浸透率がこのレベルに達するまでに40年の月日がかかっています。現在、アメリカのビデの普及率はまだ10%未満。この数値をベースに考えると、アメリカのトイレットペーパーメーカーは、市場の浸食を心配する必要はまだまだなさそうです。

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