誰も頼れず孤独死も…… 新型コロナがあぶり出す、家族と社会の“ひずみ”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)

» 2020年05月08日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

「家族」がいない人もたくさんいる

 5月4日、緊急事態宣言の延長が決まったあとの記者会見で、安倍首相は「家族」という言葉を何度も繰り返しました。

 「ゴールデンウイークには実家に帰省」「家族で旅行」「愛する家族の命を守る」「いつかきっと、また家族でどこかに出掛ける」「今は、どうかおうちで家族との時間、家族との会話を大切にしていただきたい」と。

 しかしながら、家族がいない人がたくさんいるのです。帰省する実家もない、守りたい家族もいない、一緒に出掛ける家族もいない。ましてや苦しいときに「助けて」とSOSを出せる家族も、「連絡がつかない」と心配してくれる家族もいない。そういう人たちが今は圧倒的に増えているのに、なぜか見過ごされる。

 今の日本社会の仕組みの土台は、高度成長期の「カタチ」を前提につくられたもので、1990年代を境に「家族のカタチ」は大きく変わったのに、その前提は踏襲され続けています。その結果、さまざまなリスクの不平等が生じています。

 以下の図をご覧の通り、1980年の日本は「夫婦と未婚の子のみ」の世帯が全体の4割を占めていました。そのほとんどは会社員で妻は主婦、子供は2人。「単独世帯」は18.2%です。しかし、その後徐々に単独世帯が増え、2016年には26.9%となり、「夫婦と未婚の子のみ」(29.5%)に切迫。今後さらに増え、40年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測されています。

世帯構造の構成比の推移(出典:厚生労働省「グラフで見る世帯の状況」)

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