ホリエモンが北海道で仕掛ける「宇宙ビジネス」の展望――くだらない用途に使われるようになれば“市場”は爆発する「世界一の環境」が埋もれてしまっている(2/3 ページ)

» 2020年05月09日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

日本の宇宙ビジネスは遅れている

 続いて、日本の宇宙ビジネスの現状について議論が交わされた。稲川氏は、日本は東側と南側が海で空いているため、ロケットを打ち上げるには世界一の環境であることを説明した。ロケットは東側に打ち上げることによって、地球の自転をうまく使って飛ばせるからだ。

 これに対し堀江氏は、恵まれた環境にあるにもかかわらず、日本政府が宇宙開発に力を入れてこなかったことについて疑問を呈した。

 その疑問に答えたのは北海道大学の鈴木氏。鈴木氏は政治学が専門で、宇宙開発と国際関係についても研究し、日本や世界の宇宙ビジネスのルールづくりにも関わっている。鈴木氏は、「日本は研究開発を目的にした宇宙開発を進めてきたために、商業化が遅れた。その結果、欧米に比べて宇宙ビジネスでは遅れをとっている」と指摘した。

phot 鈴木一人 北海道大学 公共政策大学院教授。2000年英国サセックス大学博士課程修了(国際政治学)。2000年から筑波大学専任講師、助教授を経て2008年から現職。2012年プリンストン大学客員研究員、2013年から2015年まで国連安保理イラン制裁専門家パネルのメンバーとして勤務。2008年から世界経済フォーラム宇宙部会委員。2010年から国際宇宙アカデミー正会員。2015年から宇宙政策委員会安全保障部会委員。著書として『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2011年、サントリー学芸賞受賞)『技術・環境・エネルギーの連動リスク』など

 鈴木氏によると、米国の宇宙産業は軍が支援する形で発達している。ヨーロッパ(欧州)は軍事的な宇宙開発ができなかった代わりに、米国に物を売るために商業化が進み、関連産業が育っているという。日本は2003年にH-IIAロケットの6号機の打ち上げに失敗して、初めて研究開発というスタンスで進めてきたことに危機感を持ち、政策の転換が起きたと説明した。

 鈴木氏の話を受けて稲川氏は、米国の宇宙ベンチャーの高い時価総額に比べると、日本のベンチャーへの期待値はまだまだ低いと実感を語った。

phot なぜ今「宇宙ビジネス」なのかについて活発な議論が交わされた

マーケットの拡大には「くだらないこと」が必要

 ではどうすれば日本で宇宙ビジネスが拡大するのか――。堀江氏は、盛り上がっていないのは真面目な用途にしか使っていないからだと持論を語った。

 インターネットが日本で使われ始めたときは、企業が社内のシステムに使おうと考える動きもあった一方、普及した要因の1つはアダルトサイトを見ることだったことを指摘。くだらないことに使われるようになって初めて、マーケットが爆発的に大きくなるのではないかと仮説を展開した。

 実際にMOMO3号機は、従来の発想にはなかったものを宇宙に運んでいる。神奈川県相模原市内を中心に飲食店を展開するGROSEBAL [グローズバル]がスポンサー契約をして、看板メニューの「とろけるハンバーグ」が搭載された。打ち上げに成功したことで、ハンバーグが宇宙に到達したと話題になったのだ。

 堀江氏は、カメラをつけた紙飛行機を宇宙で飛ばして、ゆっくり地球へ降りてくるところを撮影するなど、宇宙を真面目な用途以外で楽しむアイデアが広がれば、宇宙ビジネスも盛り上がってくるのではないかと述べた。他の登壇者からも用途の広がりを期待する声が上がった。

phot マーケットの拡大には「くだらないこと」が必要だと語るホリエモンこと堀江貴文氏

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.