「日本人なら国産」のこだわりが、”マスクパニック”を再燃させてしまうワケスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2020年05月12日 08時20分 公開
[窪田順生ITmedia]

 待てど暮らせどいっこうに送られてこないアベノマスクより、「チャイナマスク」のほうが早く国民に行き渡ることになりそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、市場から消えていた中国産マスクの流通が再開しつつあるからだ。

 例えば、スーパーやドラッグストアでは徐々に、「MADE IN CHINA」とプリントされたアイリスオーヤマなどのマスクが「お一人様1点かぎり」で売られるようになってきている。また、各地の商店街では、どこから仕入れたのか分からない中国語パッケージの50枚入りマスクの叩き売りが始まっていて、「ナゾノマスク」なんて呼ばれて話題になっている。

商店街などで「ナゾノマスク」の販売が目立つようになってきた(出典:ロイター)

 この動きはネット通販も同様で、化粧品や健康食品で知られるファンケルは自社ECサイトで本日から中国産マスクの販売を開始した(関連記事)。

 2020年1月、中国の武漢で新型コロナの感染が拡大した際、ファンケル側から中国で同社の健康食品を販売する国営企業「国薬国際」にマスク13万7200枚、防護服3000着などを支援。その「恩返し」という形で、今度は「国薬国際」側がマスク3000万枚を確保してくれたという。

 つまり、政府が「国民の不安を解消する」と466億円の税金を突っ込んだアベノマスクより、民間企業のコネクションや実行力によって調達された「チャイナマスク」のほうが、国民の不安解消につながっているのだ。

 という話を聞くと、愛国心溢れる方たちから「中国産マスクなど買っても不安は解消されない! 日本人なら国産マスクを買え!」という怒号が飛んできそうだが、「中国産」を憎々しげにディスったところで日本のマスク不足問題はなにも解決もしない。

 むしろ、「国産マスク以外は品質が悪いので買わないほうがいい」みたいな”マスクナショナリズム”が台頭していくと、第二、第三の感染拡大が起きた際に再びマスクの不足や価格の高騰が起きてしまう恐れがある。なぜかというと、「国産マスク」とうたっているマスクメーカーの多くは、原料を「中国産不織布」に依存しているからだ。

 『日本衛生材料工業連合会の統計によると2018年に国内で供給された約55億枚のマスクの内、日本製はわずか2割で残りは輸入品。マスクの原材料となる不織布も、日本企業の比率が2割でほとんどが中国産だ』(ニュースイッチ By 日刊工業新聞 4月23日)

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