「日本人なら国産」のこだわりが、”マスクパニック”を再燃させてしまうワケスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2020年05月12日 08時20分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「物流軽視」は精神主義にもつながりやすい

 現在のコロナ戦争にもこれは当てはまる。日本国内ですべてが完結する「国産マスク」が理想だが、現実問題としてそれで1億2000万人の日本人すべてが賄えるわけがない。「国産マスクは安心」「やはり国産じゃないと」という国産至上主義の考え方は、かつての日本の「物流軽視」を連想させる。そして、この「物流軽視」は精神主義にもつながりやすい。

 当時、サプライチェーンが分断されて日本中が物資不足に陥っていた際に、日本のリーダーたちに「全国民が一丸となって節約に励み、物資動員に全力を注げ」と連呼していた。マスクが足りていなくても、医療現場が疲弊していても、「みんなががんばれば感染拡大を防げる」という今の薄気味悪いムードと丸かぶりだ。

 最前線の兵士たちに物資が届かず餓死したように、最前線の医療従事者にはマスクや防護服などが届かず感染リスクにさらされている。そして、国民にはアベノマスクさえ届かない。サプライチェーンの弱さは、この国が抱えている病のひとつだ。

 コロナ危機を乗り切るためにも、今こそ国をあげてサプライチェーンを強化すべきではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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