コロナ禍で時短、休業、閉店に陥ったコンビニの絶叫 「“社会インフラ”なのに支援無い」コンビニオーナー“大反乱”の真相(2/3 ページ)

» 2020年05月14日 08時00分 公開
[北健一ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

「県外からの客」でよぎる不安

 宮崎県で確認された感染者は17人にとどまっている(5月11日現在)。だが、高橋さんがゴールデンウイーク中レジに立っていると、普段は見かけないお客が目立った。「帰省などで県外から来た人でしょう。感染が宮崎に広がらなければいいのですが」

photo コロナを受け時短営業に踏み切ったファミリーマート宮崎中央通店(宮崎市)

 今は苦しいが、課税は前年度の利益が元になる。資金繰りは楽ではないが、メーンバンクである地銀の行員が訪ねてくれ、運転資金が借りられた。政府の支援策を活用し、3年間無金利で保証人も不要(保証協会の保証付き)だ。

 「コンビニは決算資料が整っているから融資も受けやすいですが、飲食店には『借りても返せないから』と廃業を考えている人も多いのが気掛かりです」と高橋さんは言う。

 4月30日、高橋さんはFacebookに翌日から時短営業に入ることを書き込んだ。「明日より毎日、繁華街の経済が戻るまで」と。激励のコメントが寄せられ、宮崎市長も「いいね」をしてくれた。

 高橋さんは25年前、酒屋から転身した父から17歳でコンビニを引き継いだ。店の運営を始めて7カ月目、深夜のシフトに入っていた父が脳溢血で倒れ、還らぬ人となったからだ。享年42歳だった。それから二人三脚で店を切り盛りしてきた母も、7年前に亡くなった。

 父母と自身の過労から、高橋さんはコンビニ業界でも働き方改革、長時間過重労働の是正が必要だと考え、19年5月26日、龍谷大学(京都市)で開かれた過労死防止学会で「過労で倒れた父からコンビニをひきついで」と題する報告をする。その締めくくりにこんなことを言った。

 「われわれコンビニ加盟店主はぜいたくがしたくて不平不満を言っているわけではありません。せめて人並みの生活、休息がほしくて改善活動をしております。休む権利、とりわけ夜休む権利をどうにか得たい。そんな思いです」

 有言実行。本部と話し合い、19年12月から日曜日だけ時短営業にした。同時に県内の直営店も時短を始めた。この年はコンビニの24時間営業が社会問題化し、各チェーンが時短の実験や部分的容認に一歩踏み出していた。

 「昨年の時短の試みが、今生きていると思います。不要不急の外出を減らすためにも、コンビニも夜は閉めた方がいい。コンビニまで閉まれば『ほんとうに緊急事態なんだ』と市民も認知するでしょう」

 5月11日から宮崎県内の休業要請が緩和された。感染防止に気を付けながら営業を再開する店も出てきたが、以前のにぎわいにはまだ遠い。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.