――在日中国人向けを意図した上映にもかかわらず、日本の観客のほうが多くなった理由は?
アニメーターや監督といった、日本でアニメを制作されているプロの方々が、映画館で『羅小黒戦記』を見て、口コミで広めてくださったんです。この方たちがTwitterやSNSでいろいろと発信してくれたことで、最初の波が生まれました。後になって「私たちのプロモーションじゃないか?」といわれるんですけど、じつはそうではなくて、たまたま偶然です。
――日本人の観客が大勢見に来ていると気が付いたのは、いつ頃ですか?
上映から1週間後ですね。ちょうどその頃から、Twitterでこの映画に関する話題が聞こえてくるようになったんです。そこで公式のTwitterアカウントを作って、情報発信を始めました。でも最初は中国人がやっていたので、日本語がおかしかったんですよ。そうしたら逆に「カタコトの日本語がかわいい」と話題になって(笑)。
それで次に日本人の宣伝スタッフが担当して、今はプロのマーケティング会社に依頼しています。
――Twitterでのファンの反応を見て、プロモーションも段階的にアップグレードしていったのですね。
IPを育てるには、ファンが作るコミュニティーを大切にしなければいけません。「われわれが作った作品を見てください」という上からの目線ではなくて、「ファンのみなさんと一緒に作った作品ですよ」と、同じ目線の感覚でやっていくことが重要です。
先ほどお話ししたように、最初の日本語字幕はとりあえず作ったものでしたが、Twitterでファンから「日本語字幕が分かりづらい」と指摘されて、1週間で修正しました。他にも「何でパンフレットがないの?」といわれて、公開から2〜3週間ぐらいで作りました。中国には映画のパンフレットを売るという習慣がない(注:映画のパンフレットは日本独自の商習慣で、海外ではほとんど見られない)ので、最初は作らなかったのです。
映画館で上映してほしい作品を投票で選ぶシステム(TOHOシネマズが運営する「ドリパス」では、映画館で上映してほしい作品の投票が一定数集まると、その上映が実現するというシステムが採用されている)があるのですが、ファンの人たちが『羅小黒戦記』にたくさん投票してくれました。そういった形で「自分の力でこの作品がより広がった」と感じてもらうことで、ファンのみなさんに喜んでもらえる。これはアニメだけではなくて、AKBさんやジャニーズさんも、こういうやり方ですよね。
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