――日本のアニメ業界人から「ヤバイ」という声が出てくるように、『羅小黒戦記』のスタッフとは今後、互いに競っていく立場でもあると思うのですが。
彼らはとても高い技術でこれからも作り続けていくでしょうし、日本のアニメーターや演出家は、自分たちの作品をより面白くしないといけないと思っています。
ただ、彼らのスタジオが作品を作り続けることで、日本のアニメーションが見向きもされなくなるということはないと思います。それは、ハリウッドでいろんな3DCGのアニメーション映画が作られたとしても、日本でも多くの作品が作り続けられるのと同じだと思います。少なくともアニメにおいては、どちらかの影響でどちらかが衰退するというよりは、お互いが共に面白いものを作り続けて、「相手に負けないように頑張らないと」と、奮起する材料になるだろうと感じています。
――監督のMTJJ氏をはじめ、『羅小黒戦記』のスタッフのみなさんが、入江さんのツイートに反応されたそうですが?
中国の人はTwitterではなくて、「Weibo(微博・ウェイボー)」といった中国版のSNSを使っているようです。そちらのほうに私のツイートが転載されたみたいで。日本での反響は、彼らもとてもうれしく感じているようです。
私のコメントに反応したのは、私が『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』の監督をやっていたからですね(注:漫画『鋼の錬金術師』の2度目のTVアニメ化作品として、09〜10年に放送された。入江泰浩氏はこの作品の監督を務めている)。向こうのスタッフの方たちは、荒川さんの原作も含めて『鋼』のことが好きなので。Web版の『羅小黒戦記』の中に、『鋼』のコスプレをした人が登場する場面もありますから。そのあたりで「『鋼』の監督が反応している」と、特に目を引いたんだろうと思います。
――入江さんから見て、『羅小黒戦記』が日本の影響を受けていると思うところは?
どうなんでしょうね……。確かに先ほど挙げた『NARUTO -ナルト-』の作画は、向こうの人も見ていると思うんです。ただ、ああいうアクションはもともと中国の京劇や、ジャッキー・チェンやジェット・リーの映画で、中国ではおなじみのものだと思いますから。映画『グリーン・デスティニー』のような武侠モノは、まさに『羅小黒戦記』のアクションの源流になっていると思います。
だから『NARUTO -ナルト-』的ではあるんですけど、もともと中国にあったアクション映画の系譜の上に、間違いなくあるなと感じています。
『羅小黒戦記』に関して言うと、スタッフが日本のアニメーションを好きだとは聞いていますし、そういう日本のアニメーションの作画を見てきた人たちが、中国にもともとあるアクション映画を、やはり小さい時から同じように見てきたと思いますから、そのあたりがミックスされた結果なんじゃないかなと感じます。
それからストーリーに関しては、日本のアニメーションよりもむしろ、マーベルのヒーロー映画のプロットの立て方を参考にしているところが、すごくあるなと感じました。開始5分でこういうことをやって……という具合に、観客に対してどういうタイミングで情報を開示していくのか。それがすごくしっかりしたメソッドで作られていると思います。
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