家の中でも管理職のように振る舞い、嫌われる65歳元大手電機メーカー役員のリアルコロナ禍を機に考える「定年後の自分」(5)(2/3 ページ)

» 2020年05月24日 15時10分 公開
[高田明和ITmedia]

家庭内管理職では家族との関係に亀裂が入る

 だいぶ前の新聞に、家庭内でも管理職のように振る舞われ困っている妻からの相談事例が載っていました。夫のこのような振る舞いにより、妻だけでなく子どもとの関係に、修復できない亀裂が入ってしまうこともめずらしくはありません。

 2019年6月、元農林水産省事務次官の76歳の男性が、数日前に起こった川崎の20人殺傷事件を知り、44歳の無職の長男が人に危害を加えるかもしれないという理由で刺殺した事件のことを覚えている人は多いでしょう。

 これは臆測に過ぎませんが、 76歳の男性は長男が子どものころ、家庭内管理職だったのではないかと思っています。ずっとエリートだった人に家庭内管理職の人は多いといえます。則之さんも息子さんと音信不通状態なので、該当するのではないかと思います。

 子どもは父親が偉いのは理解できてよろこんでくれたとしても、家でも管理職のように振る舞われては、たまったものではありません。とくに勉強や進路のことであまりにもうるさく言われたら、子どもとの関係が修復不可能になってしまいます。自分と子どもを比べ、「どうしてできないんだ」と言ってしまう人は少なくありません。

 しかし、エリートの子どもだから自分と同じくらいにできると思うのは間違いです。子どものほうができなくてもおかしくはないのです。一緒に住んでいるわけですから、こうなると子どもは逃げ場がなくなってしまいます。

 私の知り合いにも夫婦ともにエリートの道を歩んでいて、長男と音信不通になってしまった人がいます。息子が18歳のときにエラそうなことを言ったので、「それなら自分の力だけで生きてみろ」と叱ったら家を出ていってしまい、いくら探しても見つかりませんでした。次男も長男が家を出た影響からか、フリーターになってしまったのです。あまりのショックのため、奥さんは仕事を辞めてしまいました。

 夫婦ともに人柄がよかったのですが、家庭でも管理職のように振る舞ってしまっていたのかもしれません。「自分の力だけで生きてみろ」というのは、愛情から少し鍛えてやろうと思って言った言葉かもしれませんが、子どもはそうは取らないわけです。

photo エリートの父親が息子に「自分の力だけで生きてみろ」と言った結果……

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