滝沢秀明ジャニーズ事務所副社長 10年前にYouTubeに目を付けていたビジネスセンスと先見性に迫る知られざる「唯一無二の才覚」(3/5 ページ)

» 2020年05月27日 17時33分 公開
[霜田明寛ITmedia]
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YouTubeに目を付けたビジネス感覚と「裏方思考」

 タレントのプロデュースというと、名ばかりのものに聞こえてしまうかもしれないが、滝沢秀明の場合は違う。10代の頃から自身がテレビドラマに出演しているときもビデオカメラを回してメイキング映像を編集するなど徹底的な裏方思考を持っていた。

 16年には自身でも「裏方こそ自分の全てを出し切れるんじゃないか」(女性自身 2016年12月13日号)と語っていた滝沢。「監督業には興味があります。(中略)監督は自分こそ表に出ないけれど、自分の描きたいものや魂などすべて出し切れる」(女性自身2016年12月13日号)と語る滝沢には熱情も持てる事業だった。

 注目すべきは、「2010年」という早さである。YouTuberという言葉が広まり、ネット動画で人気者が生まれる流れになったのも13年頃のことで、それよりも早い。本格的にスマホも普及する前であり、普通の芸能事務所でさえ、まだあまりネット上の動画に注目していなかった時代に、ジャニーズ事務所というネットから距離のあった事務所で、それを成し遂げたのは、時代の早さも、そしてそれに伴う周囲への説得のハードルの高さを鑑みても称賛に値する。

 5年間ほどでサービスは終了したので、大成功事業とは断言しづらいが、むしろ“早すぎた”といえるだろう。

 とはいえ、その方向性は正しかったはず。ジャニーズ事務所のタレントたちは、ポテンシャルはある分、接点があれば、ファンができる……という流れで約半世紀続いてきたが、その主要な接点となっていたテレビなどのマスメディアは枠が限られている。

 他事務所との競走もあるが、特筆すべきはジャニーズタレントの総数自体が、事務所の歴史史上、過去最大になっているということだ。1980年代にデビューしたシブがき隊は6年、光GENJIは7年で解散しているが、91年にデビューしたSMAPは25年間活動。90年代以降解散したジャニーズのグループはSMAPとタッキー&翼だけである。

 そうなると、当然タレントの数は増加する。デビューしたタレントだけを見ても、97年の時点ではSMAP、KinKi Kids、TOKIOなど総数で20人程度だったが、現在は100人以上。そこに加えて、ジャニーズJr.にもデビュー前ではあるが、実力のあるグループがたくさん存在している。そこで、マスメディア以外で接点を作るのが重要なのは自明なこと。それがネットであることを滝沢はいち早く察知していたといえるだろう。

 『滝CHANnel』のサービス終了を経て、2018年には前述した通り、ジャニーズJr.がYouTubeチャンネルを開設。中でも滝沢秀明プロデュースによるSixTONESのMV『JAPONICA STYLE』は公開2日で100万再生を突破、20年3月現在、1300万回再生を超えた。グループは、海外ではショーン・メンデスやBTS(防弾少年団)が務めてきた『YouTube アーティストプロモ』キャンペーンに抜擢(ばってき)され、20年1月のCDデビューにもつながった。8年の時を経て、滝沢のネット動画プロデュース能力が日の目を浴びたといえるだろう。

phot 1991年にデビューしたSMAPは25年間にわたって活動を続けた(訪中時。写真提供:ロイター)

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