賛成派の言い分はこうだ。香港は中国へ返還されてからずっと、自分たちで安全保障の法律を作ることができた。香港の憲法といわれる香港基本法の第23条は、反逆行為や分離独立活動、扇動、政権転覆行為、さらに香港内の政治組織が外国勢力と手を組んで反政府活動を行うことを禁じる安全保障についての法律を、香港政府が自分たちで制定させる必要があると定めている。だがこれまでずっと、反対などが起きて成立させることができなかった。
要は、自分たちで国を守る法整備を拒否してきたと賛成派は指摘する。また米中冷戦など情勢は悪化しており、安全法の制定が急務なのに、2019年の「逃亡犯条約」をめぐる大規模な抗議デモ以降、香港の立法府はほとんど機能していないとも言われている。そこでもう一つの法制化の方法として定められている通り、全人代が動いたのである。
中国政府にしてみれば、「不安定な情勢なのに、こっちが動かないと何もできないでしょ」ということなのだ。
その考え方を共有している香港のビジネスリーダーたちもいる(中国に「言わされている」と反対派は主張するが)。香港に日本や欧米の企業が集まっている理由は、安全で安定していて、透明性があるなどリスクが少ないことが背景にある。
だが19年の「逃亡犯条約」に端を発した一連の大規模デモのように、香港らしさは失われつつある。その結果、米中の貿易戦争や新型コロナの影響を受ける現状から巻き返すには、抗議デモを続けている場合ではないというのがビジネスリーダーたちの見方だ。また、香港らしくない不安要素が強まれば、香港から企業が離れるかもしれない。そうなれば香港は自分たちの首を締めることになる。だから今こそ、国家安全法が必要だと考えている人たちがいるのだ。
今回は、ジャッキーが国家安全法に賛成したからといって、単純に「相変わらずジャッキーは中国政府の言いなりだなあ」ということではなさそうだ。確かに昨今中国寄りな言動が目立つが、今回は賛同者のリストに名前を載せているだけで発言はまだしていない。
ちなみに、もう一つ問題になっているのは、香港の立法会が審議している国歌条例案だ。中国の国歌を侮辱すると刑罰を受けるという法律で、市民には到底受け入れられないとの声が多く、抗議デモも発生している。これについては、中国共産党の価値観を香港の人々の心に浸透させる気持ち悪さがあり、拒絶されるのは仕方がないだろう。
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