そもそも今回の法制案では、賛成と反対の意見が真っ向からぶつかっている。つまり、賛成している人たちもいるのである。そしてメディアの報道を見ても、バランスよく両サイドの意見を取り上げている場合はいいが、どちらか一方の声を報じている記事が多く見受けられ、日本や欧米では反中の立場の人の話が目につく。ただ本質を見誤らないよう、両サイドの言い分に目を向けたい。
反対派の言い分はこうだ。
中国政府は、香港国家安全法が「香港の安全と安定のため」だと言っているが、反対派はまさにその真逆だと見ている。市民の活動や権利、そして民主化運動が制限されることになると主張し、中国共産党の価値観が押し付けられ、自治もクソもない「香港終了」になるとの声も上がっている。
香港市民はこれまでも中国共産党の「存在」は十分に肌で感じていたが、それがはっきりと「目に見える」状態になると警戒しているのである。例えば、香港国家安全法ができれば、中国は香港に安全保障機関なるものを設置し、香港市民を取り締まるという。悪名高い中国の諜報機関である国家安全部(MSS)が大手を振って活動することなり、恐怖が社会に蔓延する。以前話を聞いた英情報関係者は、「MSSは拷問や抑圧などを容赦なく平気で行うことで知られている組織で、秘密警察のようなものだ」と語っていた。
確かに中国は、選挙で立候補者を制限したり、反中の香港市民を拉致するなど、強硬な措置をとってきた。中国政府の動きに、香港市民がいちいち警戒心を剥き出しにして声を上げるのも当然かもしれない。
一方でこの法制化に賛成する香港人も少なくない。というのも、香港は最近、抗議デモなどが頻発していて情勢が不安定になっており、その悪影響は香港に跳ね返ってきているからだという。
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