ブロックチェーン技術を使った新しいカテゴリーの「お金」であるデジタル通貨への期待が世界中で高まっている。例えば、ビジネスの現場で事務処理を大幅に軽減するなどのメリットがある。ただし日本では法規制が技術に追い付かず、デジタル通貨をビジネスに活用する見通しが立たない状況が続いていた。
最近、デジタル通貨をめぐり注目される動きがあった。2020年6月から、3メガバンク(みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行)、電子マネー「Suica」を発行するJR東日本などが集まり、デジタル通貨の「勉強会」を始めるというものだ。オブザーバーとして金融庁、財務省、総務省、経済産業省、日本銀行が参加する。座長は前・日本銀行決済機構局長で、現在はフューチャー取締役の山岡浩巳氏が務める。事務局を務めるのは暗号資産交換所を運営するディーカレットである(発表記事参照)。
こうした顔ぶれに影響されてのことか、「3メガバンクのデジタル通貨とSuicaが連携する」と伝える報道も出た。一方、主催者側は「あくまで勉強会。決定事項はなく、前提とするビジネスモデルもない。これから話し合う段階だ」と説明している。このような報道が出る背景には、期待の大きさ、そしてデジタル通貨をめぐる「分かりにくさ」がある。
そもそも、デジタル通貨とはいったい何なのか。
デジタル通貨という言葉の意味を素直に考えるなら、「お金をデジタル技術に載せたもの」といえる。この説明は間違っていないが、読者の疑問は解消できないだろう。銀行はすでに情報システムによりお金を扱っている。電子マネーやキャッシュレス決済アプリも多数登場している。それらと「デジタル通貨」の本質的な違いは何だろうか。
次のように考えてみよう。新しいビジネス上の概念を作り出すとき、ざっくり分けて2つの考え方がある。1番目の考え方では、既存の概念や法制度を検討し、既存の枠組みに合わせて作る。従来のネット銀行、電子マネー、キャッシュレス決済アプリなどはこのような考え方に基づいて作られている。金融業界はコンプライアンス(法令順守)に厳しい業種なので、このやり方が主流だ。
2番目の考え方は、ゼロベースで作るというものだ。実は、デジタルな「お金」をゼロベースで考えて構築する試みはすでにある。ビットコインに代表される暗号通貨である(仮想通貨、暗号資産ともいう)。デジタル通貨とは、暗号通貨の考え方をベースとしながら価格の安定や法令順守などの要件を満たし、ビジネスで使えるようにしたものだ。技術的にはブロックチェーン技術を応用していると考えてほぼ間違いない。
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