汚職とコロナ禍で後ずれ カジノ誘致を再考すべき、これだけの理由コロナ禍のカジノ事情「国内編」(1/4 ページ)

» 2020年06月12日 17時20分 公開
[中西享ITmedia]

 安倍晋三政権が鳴り物入りで誘致を目指していたカジノを含む統合型リゾート(IR)の実現が、コロナ危機の長期化により遠のきそうだ。

 国際会議場・展示施設などのMICE施設、ホテル、ショッピングモール、レストラン、劇場、映画館、アミューズメントパーク、スポーツ施設などが一体になった複合観光集客施設IRを運営する業者の選定作業などが遅れている。

 それを踏まえてIRの誘致を再考すべき最大の理由――。それは、地上の巨大施設に多くの観客が多数集まるIRでは、世界的なコロナ感染拡大によりその前提条件が根底から覆されたからだ。中でも長時間、密集状態になるカジノは感染の恐れが最も高くなりそうだ。1年以内に新型コロナに効く治療薬かワクチンが実用化されれば条件は変わるが、それも難しい。しかも欧米の主要なIRの運営業者はコロナによる営業停止で業績が悪化、これまでのような利益をあげるのは困難になり、多くのインバウンドを見込めそうにないため日本への投資も及び腰になっている。

 IR誘致による観光産業の活性化させて誘致した地域の経済を発展させるというシナリオが崩れた以上は、カジノ施設などハコモノに無駄な投資をつぎ込むよりは、潔く撤退するのが賢明な選択ではないだろうか。IRを巡る現状と今後について、「国内編」と「海外編」の2回にわたりレポートする。

phot 大阪府と大阪市が大阪市此花区夢洲地区で計画しているリゾート地のパース図(関西経済同友会提供)

汚職とコロナ禍で後ずれ

 IRの実現を巡っては2016年12月にカジノ法案で知られる特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR推進法)が施行された。政府は17年3月に安倍首相を本部長とする「特定複合観光施設区域整備推進本部」を立ち上げ、ギャンブル依存症が増える、リゾート施設周辺の治安が悪化するといった反対を押し切って実現を図ろうとしていた。

 IR法が成立した17年ころは、候補地として名乗りを上げる自治体が相次いだ。人口減少と雇用の落ち込みに苦しむ地方自治体としてはIRを誘致することにより、何とか地域全体の活気を取り戻したいという願望を込めての誘致だった。当初は、北海道(苫小牧市、留寿村)、長崎、大阪府・市、横浜市、和歌山県(マリーナシティー)、愛知県、千葉県(幕張)、東京(台場)などが手を挙げた。

phot IR(統合型リゾート)の概要(以下資料は横浜市が昨年の3月にまとめた『IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり検討調査報告書』より)

 その後、IR推進法を衆院内閣委員長として採決した元IR担当副大臣の秋元司衆院議員が、IRを巡り日本に進出を目指していた中国企業から現金を受け取っていた収賄の容疑で昨年12月に逮捕されるなど、誘致に絡んで候補地との不祥事が相次いだ。また、IRにはカジノが設置されるため、候補地となっている地域住民から治安が悪化するなどとする反対意見が強く、誘致しようとする自治体のトップは苦しい判断を求められている。

 さらにこのコロナ危機が発生したことで、多くの外国人を含む観光客が集まるリゾート施設内では、いわゆる「3密」が起きやすいことから、計画の実現は強い「逆風」にさらされている。当初の予定では20年には日本の中で2〜3カ所選定され、24〜5年ごろには営業開始できると見られていたものの、コロナ禍により先が読めなくなっている。

phot カジノに起因する懸念事項と海外での対策
phot 日本型IRに関する賛成意見・反対意見
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