汚職とコロナ禍で後ずれ カジノ誘致を再考すべき、これだけの理由コロナ禍のカジノ事情「国内編」(2/4 ページ)

» 2020年06月12日 17時20分 公開
[中西享ITmedia]

大手業者が撤退を表明

 日本の「IR危機」を象徴するニュースが、5月初めに米国のカジノ大手ラスベガス・サンズが日本での参加を断念すると発表したことだ。同社は米国、マカオ、シンガポールでIRを運営する事業者で、業界の中では世界のリーダー格企業として知られている。サンズは昨年、「日本での事業の収益性に問題がある」などの理由で大阪からの撤退を表明し、その後、横浜市が誘致を進めるIR事業への参入が有力視されていたものの、横浜市からも撤退した。日本での事業は欧米と比べて制約条件が多いため、将来的に投資に見合った利益が上げられないと判断したとみられている。

 別の米国大手シーザーズ・エンターテインメント、メルコリゾーツ&エンターテインメント(香港)も、昨年9月に大阪から撤退を表明した。米国の大手業者は本場米国での事業収入がコロナ禍で大幅に落ち込んでいて、当面は既存事業の立て直しに専念すると見られている。日本の候補地が計画しているような大規模なIR施設を運営するためには、こうした専門業者のノウハウが必要となるものの、大手の2社が撤退を決めたことで運営主体の選定が難しくなってくる。

phot メルコリゾーツ&エンターテインメントが運営するマカオのシティ・オブ・ドリームス

 昨年の9月の記者会見で赤羽一嘉国土交通相は、候補地について千葉市、北海道、長崎、名古屋市、和歌山、大阪、東京、横浜市の8つを挙げた。だが、その後は終息見通しのつかないコロナ禍、さらに米国の大手IR運営業者が日本への進出を諦めるなどネガティブなニュースが相次いだことで、IR立地を推進するムードが一気に冷めてきている。菅義偉官房長官は5月になって、「観光立国を目指すわが国にとってIR整備は必要不可欠」と、政府としてはこれまでのIR推進の方針に変わりはないとしているものの、計画実現は難しくなる一方だ。

phot 国の動向

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