汚職とコロナ禍で後ずれ カジノ誘致を再考すべき、これだけの理由コロナ禍のカジノ事情「国内編」(3/4 ページ)

» 2020年06月12日 17時20分 公開
[中西享ITmedia]

松井大阪市長は「コロナ終息後に検討」

 その後、多くの候補地が脱落した。現在、有力候補地となっている大阪と横浜、長崎、和歌山のケースをみてみよう。大阪府と大阪市は昨年4月、大阪市此花区夢洲地区で計画しているIR事業コンセプトを募集する手続きに着手、6月には7社から参加登録を受け付けたと発表した。しかし、ラスベガス・サンズに続き、メルコリゾーツも大阪のIR事業からの撤退を表明、肝心の運営業者の選定が困難になっているのが実態だ。

 IR施設を建設するのは夢洲地区の第1期用地約49ヘクタール。中核施設としてMICE施設(6000人以上収容の国際会議場、中小会議室群など)、魅力増進施設、宿泊施設(3000室以上)、カジノ施設などを盛り込んだ計画を明らかにし、24年の開業を目指している。大阪市と大阪府は「大阪府市IR立地準備会議」を作っており、昨年の12月には全国の自治体の中でトップを切って事業者の公募を開始した。その結果、MGMリゾーツとオリックスの共同グループ1社のみが最終的に申し込みをした。

 しかし1社だけのエントリーでは公平な選定ができないことなどから、松井一郎大阪市長は4月初めに、事業者選定(RFP)の書類提出期限を7月まで延期、9月までに選定する考えを示し、3カ月遅れる見通しだ。開業時期の再設定についても触れ、開業時期は新型肺炎の終息目途が立った時点で検討する考えを明らかにしている。

 大阪にIRと「大阪万博」を誘致することは、昨年4月7日に行われた大阪府知事・市長ダブル選挙で大阪維新の会の選挙公約となっていた。

 地元の関西では関西経済同友会などが中心となって、25年までに「大阪万博」とIRの実現により関西の持続的成長につなげたいとしていて、2月に開催された「関西財界セミナー」ではその方策を議論していた。しかし、その後にコロナ禍が発生し、松井市長がコロナ禍の終息のめどが立った時点でIRの開催時期を検討する考えを示したことで、当初計画していた「大阪万博」前のIRの24年開業は厳しくなっている。

phot 既存の遊技場・公営競技などの市場規模、店舗・施設数

横浜市は市長リコールの動きも

 横浜市はどうか。同市は19年をピークに人口が減少に転じるなど深刻な現状に直面していて、林文子市長はこの課題を克服する突破口として、30年を展望した「SDGs未来都市・横浜」コンセプトビジョンと共に、IRの誘致を掲げてきた。

 横浜市の臨海部を再生させるとともに、横浜港の山下ふとうを開発の基本計画に、ハーバーリゾートの形成を予定している。しかし、今年1月にはIRの誘致を目指している林市長のリコール(解職請求)を求める地域住民による署名活動が始まるなど、反対運動も強まっている。

 6月に発表を予定していた「実施要項」の公表は8月に延期された。住民へのIR計画の説明会は12カ所について終了したものの、6カ所残っており、コロナで日程が延期されている。林市長は4月15日に、新型コロナウイルスの感染状況を考慮して「実施要項の発表を2カ月遅らせることにしたが、ギリギリの判断だ」と発言している。横浜市都市整備局の中にIR準備室を設置して対応しているものの、コロナ禍で全ての見通しが後ずれしてきていて、担当者は見通しが立たないと嘆いている。

phot 横浜を取り巻く状況と課題

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