「早すぎたリケジョ」が氷河期に味わったジレンマ――“ダイバーシティー無き企業社会”は変われたかロスジェネ女子の就職サバイバル(1/4 ページ)

» 2020年06月19日 18時00分 公開
[菅野久美子ITmedia]

 就職氷河期が直撃したロスジェネ世代(1970年〜82年生まれ)。就活が極めて狭き門で、企業や国からも「放置されてきた」世代だ。特にロスジェネ世代の女性は、男性に比べ結婚、出産といったライフステージの比重が高い上に、今ほど男女平等や働き方改革、セクハラ対策の恩恵も受けられていなかった。

 ロスジェネ女子連載第5回では、近年で言うところの「理系女子(リケジョ)」だったにも関わらず、時代故に企業や社会からの無理解に苦しんだ、あるロスジェネ女性の人生を追った。

 「30代で、ロスジェネであることを病んで、一度闇落ちしたんですよ」

 佐藤由紀子さん(仮名・46歳)は、そう言ってそっと視線を落とした。佐藤さんは名門女子大の理系学部を卒業後、事務員として30代半ばまで非正規として働き、現在は企業に正社員として勤めている。待ち合わせ場所のカフェに現れた佐藤さんは、その話しぶりから、すぐに理知的で優秀な女性であることがわかった。

photo 「早すぎたリケジョ」の佐藤由紀子さん(仮名)

今や人気のリケジョ、しかし氷河期では……

 今やすっかりメディアで定着し、人気の人材と紹介されることも多い「リケジョ」。マイナビの2020年卒大学生就職内定率調査によると、19年8月末時点の理系女子の内々定率は88.8%で、男女・文理別で最も高い比率となった。ダイバーシティー(多様性)の尊重が企業で叫ばれる中、男社会だった理系の職場で女性の活躍が求められている点も大きい。

 無論、東京医科大学など医大入試で女子学生が差別されていた問題をはじめ、今なおリケジョへの風当たりは多く存在する。ただ、佐藤さんが立ち向かった20年以上前の就職戦線は、現状では考えられないレベルの男尊女卑がまかり通っている、まさに戦場だった。

 会社説明会には、就職情報誌に付属のはがきで応募しなければならないが、そもそもその情報誌が男子学生には届くが女子学生には届かない。そのため、手書きで一枚一枚はがきを書いて企業に「お願い」しなければならなかった。

 それでも数は少なかったが、女子大に求人票を出す企業もあった。しかし、そこでも別のハードルが待ち受けていた。女子大に求人票があることを知った共学に通う女子学生が学内に潜り込み、張り出された求人をむしり取っていくのだ。

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